東京・目黒の東京都庭園美術館で「永遠なる瞬間 ヴァン クリーフ&アーペル ― ハイジュエリーが語るアール・デコ」が開催されている。本展は1925年に開かれた「現代装飾美術・産業美術国際博覧会(通称アール・デコ博覧会)」から100周年を記念するもの。会場には、歴史的価値が認められるメゾンの貴重な作品を集めた「パトリモニー コレクション」をはじめ、約310点の作品および資料を展示。アール・デコ期のジュエリーから現代にまで継承される「サヴォアフェール(匠の技)」を紹介する。


アール・デコ様式の邸宅を、ヴァン クリーフ&アーペルの華やかなジュエリーが彩る

 ヴァン クリーフ&アーペルは、1895年にアルフレッド・ヴァン クリーフとエステル・アーペルの結婚をきっかけに創立されたハイジュエリーメゾン。四葉のクローバーをかたどった「アルハンブラ コレクション」をはじめ、精緻な技術と華やかなデザインで知られる。

 今回の舞台である東京都庭園美術館は、1933年に建てられた朝香宮邸をそのまま活用している美術館。

 朝香宮殿下と妃殿下は1922年から約3年間パリに滞在していた折に、アール・デコ博覧会を訪れ、華やかで洗練された室内装飾に深く感銘を受けたという。帰国後、自邸の設計を同博覧会のさまざまなパヴィリオンの室内装飾も手がけた装飾美術家アンリ・ラパンに依頼。室内装飾には、ガラス工芸家ルネ・ラリックら多数のアーティストを起用し、邸宅全体をアール・デコ様式の空間として作りあげた。

 まず注目してほしいのは、展覧会のポスター。デザイナー・林琢真氏が手がけたもので、中心には展示作品の一つであり、アール・デコ博覧会でグランプリを受賞した《絡み合う花々、赤と白のローズ ブレスレット》を据え、背景には邸宅の内装材として使われている「ラフコート」の壁面が取り入れられている。ラフコートは、当時は開発されたばかりの最新の素材で、職人たちが手作業で刷毛目の装飾を施した。

 「最新の素材・技術」と「伝統的な匠の手仕事」のコラボレーションは、まさにヴァン クリーフ&アーペルの作品制作の精神とも通じるものであり、展覧会では“建物とジュエリーとの対話”をコンセプトに、さまざまな工夫が凝らされている。

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