海外での出会いは、“実践の場”
現在、僕はノマド生活を送りながら、世界中を旅している。ヨーロッパでもアジアでも、さまざまな人と出会い、話し、笑い合って。イタリアの小さな島で、現地の言葉がまったくわからなくてGoogle翻訳に頼ったこともあるけれど、それでも伝えようとする気持ちがあれば、思いはきっと通じる。
海外での出会いは、まさに“実践の場”。英語を話すチャンスがそこら中に転がっているし、「せっかくだから、話してみよう」という気持ちが、自分を前に押し出してくれる。バスを間違えても、レストランでうまく注文できなくても、最終的にはどうにかなる。最悪、Uberもあるしね(笑)。
もう一つの思考軸
なんだかんだ、英語を学んだことで、自分の考え方まで変わった気がしている。恋愛や友情に関すること、日常のちょっとした会話でも、英語で考えるほうがしっくりくるときがある。言葉って、それを使う文化や思考とセットになっているんじゃないかな。日本語と英語、どちらも行き来できるようになったことで、自分の本音により近い言葉を選べるようになった気がする。英語は、僕にとって「もう一つの思考の軸」になっているのかもしれない。
翻訳アプリも便利だけど、自分の言葉で伝えられる喜びは格別。何より英語は、僕に自己肯定感をくれた。世界を広げ、人生に選択肢をくれた。「話せないから無理」じゃなくて、「少しなら話せるかも」から始めてみる。それだけで、世界はぐんと広がる。もちろん、まだ知らない言語はたくさんあるし、英語だって完璧じゃない。そして、まだ出会っていない誰かが世界のどこかにいる。
旅先で「ありがとう」や「こんにちは」だけでも現地の言葉で伝えると、相手の表情がふっと柔らかくなることがある。タイでは「コップンカー」、スペインでは「グラシアス」。たったそれだけで、その土地がぐっと近く感じられる。だから僕は、どんな国に行っても、まず「こんにちは」と「ありがとう」だけはその国の言葉を覚えて伝えるよう心がけている。だって、嬉しいでしょ? 言語って、そうやって人と人との距離を縮めてくれるものだと思うから。
與真司郎(あたえ・しんじろう)
1988年、京都府生まれ。14歳のときにエイベックスに入り、2005年に結成した男女混合のパフォーマンスグループ「AAA(トリプル・エー)」のメンバーとしてデビュー。2016年、ソロ活動開始と同時にロサンゼルスに移住。大学に通いながら約9年間を過ごす。2021年、AAA初となる6大ドームツアーを終えたタイミングでグループは活動休止に。2023年7月、「與真司郎 announcement」にて、自身がゲイであることを公表。著書に『すべての生き方は正解で不正解』『人生そんなもん』(ともに講談社)がある。
