子どもをつくらないという「揺るぎないからだ」
――自分は子どもをつくらない人生を主体的に選んだのだと。
荻上 もともと私は「人の要望には応えなければ」という感覚が強く、断れずに引き受けてしまうことも多い。その性質を自覚していたからこそ、自分が揺らがないよう、からだそのものの生殖機能をオフにしておきたかったんです。
よく言われる「私のからだは私のもの」という言葉は、バウンダリーの確保のために重要なフレーズです。「自分で決める」と決定権を持ちつつも、同時に人には、「されど話し合う」という場面もある。妊娠の可能性についてはまさにそうですし、病気や介護など、からだに関わることは家族やパートナーとの調整が必要になる場合もあります。互いの意向や前提を持ち寄ったうえで、身の置き方を話し合う。その中で、自分が譲れないことも明示する。そのための選択が、私にとっては精管結紮術だったんです。
続きは「CREA」2025年秋号でお読みいただけます。
荻上チキ(おぎうえ・ちき)
1981年、兵庫県生まれ。評論家。TBSラジオ「荻上チキ・Session」のメインパーソナリティ。太田出版のWebマガジン『OHTABOOKSTAND』にて自身の体験を綴った「管を断つ」を連載。近著に『大日本いじめ帝国』(中央公論新社)。
●SELF-CARE Items
茶香炉

茶葉を上皿に入れてキャンドルで焚くとお茶のいい香りが漂う。焚いた茶葉は消臭効果も。「暗い部屋で焚くとぼんやり灯り、香りと相まってほっとします」(写真はイメージ)

2025.09.09(火)
文=伊藤由起
写真=平松市聖
CREA 2025年秋号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。