生理の苦痛を和らげQOL(クオリティオブライフ)が飛躍的に上がると噂の子宮内避妊具「ミレーナ」について、自らも愛用中のエキスパートに取材。未産婦でも使える? 痛みは? などの素朴な疑問に答えます。


未産婦でも性交未経験でも

「避妊の心配や生理のつらさから解放される」と話題の子宮内避妊具「ミレーナ」。日本では2007年に避妊薬として承認され、2014年には過多月経の治療薬として保険適用に。

「二人目を産んだらミレーナを入れるのが夢だった」と語る宋美玄先生は、自らも2015年から愛用。その快適さを発信し続け、これまで1,000人以上の希望者にミレーナを入れてきたパイオニアだ。

「2019年にテレビ番組で紹介されたのをきっかけに、一気に広がりました」(宋先生・以下同)

 メディアでミレーナが取り上げられると同時に、“ミレーナは経産婦しか使えない”という間違った情報が広まった。

実際には、未産婦はもちろん、セックスの経験がない方でも使用できます。帝王切開した人は断るクリニックもありますが、当院では受け付けています。ピルだと血栓症のリスクが高い、肥満の方や喫煙者も使えます。おすすめできないのは、ミレーナを入れても離脱しやすい粘膜下筋腫、飲み薬の方が効果が期待できる子宮内膜症やチョコレート嚢胞の方です。当院では痛みが心配な人のために局所麻酔などを準備していますが、入れた後は生理痛のような痛みを感じる方も。子宮と卵巣にしか効かないので、全身の副作用のリスクが少ないのもメリット。その後、少量の不正出血がある方もいますが2、3カ月でおさまります」

生理痛や妊娠の心配から解放

 ユーザーの感想として最も多いのが、「もっと早く使いたかった」との声。友人の口コミで来院する人が増えている。

「月経困難症や生理痛などの不快な症状はもちろん、経血が服についたりナプキンの持ち合わせがなかったりの不安から解放されます。ピルのように飲み忘れる心配もなく長期的にかなり確実に避妊ができ、妊娠を望むタイミングで取り外せます。5年間使えることを考えると結果的にコスパもよい。通院回数が少なくて済むのも魅力です。生理痛は我慢しなくていいし、妊娠したい時期としたくない時期は自分で決めていい。ミレーナを通して、そういう体の自己決定権がもっと広がればいいですね

≪ミレーナに関する疑問≫

Q:PMSに効果があるの?

A:「ミレーナは子宮に局所的に作用します。また、着床を防ぐ効果はありますが、排卵を止める効果はありません。PMSへの効果を狙うのであれば、全身に効いて排卵を止めるピルの方がおすすめ。同じ理由で、ニキビや肌荒れにもピルの方が効果的です」(宋先生)

Q:産後はいつから使える?

A:出産後、2カ月経てば入れることができます。ユーザーでいちばん多いのは、子どもを産む予定が無い経産婦の方ですが、10年ぐらい産む予定が無い20代の希望者も多いですね。また、意外な効果としてセックスの120時間後までは緊急避妊として使えます(宋先生)

Q:閉経後に入れても遅い?

A:ミレーナは年齢制限がないので、一般的にピルの処方が難しい40歳以降のプレ更年期世代にもおすすめ。更年期のホルモン補充療法でエストロゲン製剤を服用する際に、子宮内膜の増殖を抑制するプロゲスチン製剤を飲まなくて済むメリットも(宋先生)

●ミレーナの仕組み

子宮内に入れて避妊、過多月経、月経困難症などに5年間効果を発揮する、3センチぐらいのT字型のやわらかなプラスチックの器具。黄体ホルモンの成分(レボノルゲストレル)が適量ずつ徐々に溶け出し、子宮内膜を薄く保つ。医師による挿入・抜去で、1カ月後、3カ月後、半年後、1年後から半年ごとに定期検診の必要が。

「生理痛や過多月経で悩んでいるなら保険適用で初診の場合は約13,000円、自費だと当院では税込で55,000円」(宋先生)

2023.09.22(金)
Text=Anna Osada
Illustrations=Haruhi Takei

CREA 2023年夏号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

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