この記事の連載

季節の生菓子には秋が到来

 和菓子の世界で雅やかに少しずつ近づく秋の気配を表現しています。こちらの「紅葉重」とは、平安貴族の衣装などに使われていたという雅びな色づかいにちなんだもの。黄と紅に染め分けた白餡を、葛の生地で包んでいます。

 やわらかな色の移ろいが、季節の微妙な変化を表し、心が落ち着いていくようです。

「水仙」は、葛製を表す言葉。つるりとした葛を使ったお菓子の名前に使われているので、意識してみると面白いのです。

 「下染」とは、染色の世界の言葉で、本染の前にほかの色で染めること。本格的に紅葉する前の葉の色を、そんな言葉に例えています。色合いもふんわりとぼかし、季節の移ろいを感じます。

 琥珀羹の中に白餡がうっすらと。そんな様子もどこか風流なお菓子です。

 涼しくなってくると槇の木がシンボルのテラスも居心地が抜群。中央通りを見下ろす立地とは思えない風情が漂います。贈りものを探しに出かけたら、ぜひ一服を。

TORAYA GINZA

所在地 東京都中央区銀座7-8-17 虎屋銀座ビル4F
電話番号 03-6264-5200
営業時間 11:00~19:00(L.O.18:30)
定休日 元日、第2月曜(祝日の場合は第3月曜)

次の話を読むかぼちゃ餡のきんとんや栗のかき氷、りんごの小形ようかん…秋食材のやさしい甘さに癒やされる“とらやの秋”

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Column

歳時記 TORAYA GINZA

2024年、銀座7丁目にリニューアルオープンした「TORAYA GINZA」。テラス席もある美しい店内では、果物やスパイスを使ったほかの店舗とは少し違ったメニューをいただけたり、予約制のカウンターでは、目の前で和菓子を仕上げてくれるなど、楽しい提案がたくさん。より季節感を感じられるこの場所で、和菓子から1年の移ろいをご紹介します。

2025.08.22(金)
文=CREA編集部
写真=志水 隆