「負け犬」世代の3人の「今」に、胸が熱くなる
岡田惠和作品好きとしては、「女性たちの友情物語」としても本作を語らずにはいられません! 『おひさま』『ひよっこ』『それでも恋する』『日曜の夜ぐらいは…』など、岡田脚本は「女の友情なんて当てにならない」という刷り込みを、心地よく上書きしてくれる点が魅力です。
だからこそ、千明、万理子、典子(飯島直子)の3人のやり取り、そして千明、啓子(森口博子)、祥子(渡辺真起子)の“大人女子会”トークも本作の見どころの一つ。日本版『セックス・アンド・ザ・シティ』であるともいえるほど、会話のテンポがいいんです(実際に千明が元カレにポストイットで別れを告げられたエピソードは、『SATC』シーズン6「弱気な男のポストイット」のキャリーとまったく同じ展開。千明は「地でヒロインをやってしまう“おもしれー女”なんです!)。

独身女性と既婚子持ち女性、さまざまな女性の生きづらさも描かれており、それぞれの悩みを明るく描いている点にも、強く『SATC』イズムを感じます。特に毎話しっかりシーンとして入れてくれている独身トリオの飲み会の小気味よさは最高! 人生の苦楽を共にし、互いの人生を尊重し合いながら、心の支えとなる「同志」であり、「大人の友情」の理想形に思えます。
きっとこれまでいろいろなことがあったでしょう。「未婚、子ナシ、30代以上」の女性を自虐的に「負け犬」と呼んで大ヒットしたエッセイ『負け犬の遠吠え』が出版されて22年。千明や独身仲間の啓子、祥子らは、まさに働き盛りのときに「負け犬」呼ばわりされた世代でもあります。
男性優位社会、恋愛・結婚至上主義の世の中で、3人ともあらゆることを言われてきたはず。それを乗り越え、よくぞよくぞシーズン3までたどり着いてくれました! 人生を仮に勝ち負けで表現するとしても、社会的な地位の上下は「普通に結婚して子どもがいる=勝ち」では決まらない。今はそう胸を張って言ってもいい時代ですよね。
さらに年齢とキャリアを重ねてパワー(影響力や決定権)を持った3人。それは本当に努力の賜物で、すばらしいことです。しかし、パワーがあるからこその悩みや苦しみもある。それらを抱えながらも、上に立つ者として日々アップデートしようとする姿勢は、本当に尊敬に値します。社会の中でそれぞれが一人で戦いながらも、この集まりで羽をそっと休めているのだと思うと、一層胸に迫るものがあります。
2025.06.23(月)
文=綿貫大介