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付き合い始めて10年後、やってきた別れ
浅野 彼との共同生活が始まった頃、私はこんなことを言ったのよ。「お互いこんな齢だから、一緒に暮らすのは、あと10年かな」って。相手は、「じゃあ、10年間、楽しいことをいっぱいしようね」だって。
近田 微笑ましいね(笑)。
浅野 そしたら、実際、9年目を迎えたあたりで、お互いをめぐる境遇が変化したのよ。彼の孫が山梨で生まれたり、そして地元に自分のギャラリーみたいなものを作ったりとかさ。私も私で身の回りにいろいろとあって。
近田 確かに、60代後半って、何かと選択を迫られる年頃ではあるよね。
浅野 それで、関係を解消し、彼は帰郷することになった。「君が山梨に来るのは無理かな?」と聞かれたけど、「たぶん無理だと思う」と答えた。

近田 それで、別れちゃったんだ。
浅野 それがまさに10年目。でも、いがみ合って離れたわけじゃないから。円満円満。「僕が引っ越しても、いつも君のそばにいると思ってね」と言われたぐらいで。
近田 その後、会ったりはしてないの?
浅野 下手に会っちゃって、また惚れちゃうといけないもの。素敵な人だからさ。
近田 うわーっ、最っ高の誉め言葉だね。俺も一度言われてみたいもんだよ(笑)。
浅野 ズルズル引きずるのは嫌なのよ。一切連絡も取ってない。その代わり、心の中で、「元気でいてね」って祈ってる。
近田 何だか、いい別れ方だよね。
浅野 私、長く付き合った人とは、誰とも喧嘩して別れてないのよ。その時その時の事情があって別れてる。縁があってくっついてるんだからさ。
〈次回に続く〉
浅野順子(あさの・じゅんこ)
1950年横浜市出身。ゴーゴーダンサー、モデルなどを経て結婚し、ミュージシャンのKUJUN、俳優の浅野忠信の2児を儲ける。ブティックやバーの経営に携わった後、独学で絵画を描き始め、2013年、63歳にして初の個展を開催。その後、画家として創作を続ける。ファッションアイコンとしても注目を浴び、現在は、さまざまなブランドのモデルとしても再び活動を繰り広げている。
近田春夫(ちかだ・はるお)
1951年東京都世田谷区出身。慶應義塾大学文学部中退。75年に近田春夫&ハルヲフォンとしてデビュー。その後、ロック、ヒップホップ、トランスなど、最先端のジャンルで創作を続ける。文筆家としては、「週刊文春」誌上でJポップ時評「考えるヒット」を24年にわたって連載した。著書に、『調子悪くてあたりまえ 近田春夫自伝』(リトルモア)、『グループサウンズ』(文春新書)などがある。最新刊は、宮台真司との共著『聖と俗 対話による宮台真司クロニクル』(KKベストセラーズ)。
6/6発売のCREA2025年夏号「1冊まるごと人生相談」特集に浅野順子さん×近田春夫さんが登場! 発売を記念してお二人のトークイベントも開催します。
画家・モデル 浅野順子さん×音楽家 近田春夫さん「いろいろあって70代」
会場:代官山 蔦屋書店シェアラウンジ イベントスペース(Zoom配信あり)
日時:7月4日(金)19:00~20:30
料金:リアル・オンライン参加券1,650円
詳細:代官山 蔦屋書店イベント告知HP
https://store.tsite.jp/daikanyama/event/humanities/47628-1731320530.html
お申込みは以下の専用応募フォームより
https://eventmanager-plus.jp/get/2ffbab53eca652789424fcbad4a3189850ad604974491a9d80cb9aca6d1b4f28
チケットのお問い合わせ:代官山 蔦屋書店 daikanyama.tsutayabooks.onlineevent@ccc.co.jp
その他のお問い合わせ:株式会社文藝春秋 宣伝プロモーション局 プロモーション部 pr@bunshun.co.jp
■浅野順子さん×近田春夫さんへのお悩みを募集!
イベント当日は、皆さんのお悩みに浅野さんと近田さんが答える「人生相談」も予定しています。6月23日(月)18時までに、CREA編集部 creaweb@bunshun.co.jp 宛に(件名を「浅野順子×近田春夫お悩み相談」に)、お名前(ペンネーム可)とともにお送りください。当日、会場にてご回答いただく予定です。
※限られた時間のため、すべてにお答えいただくことはできません。

2025.06.05(木)
文=下井草 秀
撮影=佐藤 亘、平松 市聖