建物自体が語りかける、過去と今が交差する客室たち

客室のあちこちに、過去と現在が重なり合うような“手の跡”がそっと残されています。たとえば、天井を見上げると気づく、独特な木の重なり。「鎧張り」と呼ばれるこの工法は、板を段違いに重ねていくことで、雨を防ぎながらも美しい陰影を生み出します。

本来は外壁に使われることが多いこの手法を、あえて天井に取り入れたのは、地域の大工さんのアイデアから。光と影がゆるやかに揺れるその天井は、どこか舟底を思わせるような穏やかなラインを描いていて、見上げるたびに静かなやすらぎを感じさせてくれます。



障子の代わりにそっと設えられた「すだれ障子」も、かつてこの家に眠っていた素材を使って、大工さんがひとつひとつ手作業で仕立てたもの。風を通しながら、やわらかく光を受け止めるその姿には、エアコンのなかった時代の知恵と、暮らしに寄り添う工夫が息づいています。

ここで紹介した、フロントにあたる棟にある客室4室の他に、1棟貸しの離れが3室。それぞれが、元々あった古民家の個性を活かした設えになっていて、個性豊かな客室ばかり。何度も佐渡を、そして相川を訪れたくなる理由にもなってくれます。
2025.05.28(水)
文=齊藤美穂子
写真=佐藤 亘