チェックインは、町の“玄関”であるシアターから

 チェックインを行うのは、町の観光案内所を兼ねた施設「きらりうむ佐渡」。ここでは、金銀山の成り立ちや町の歴史を、臨場感あふれる映像で知ることができます。実はこの施設も、宿泊プランの一部。入館チケットは宿泊料に含まれているため、客室へ向かう前にこの“町のシアター”を体験すれば、ぐっと豊かな旅へと変わっていきます。

 「着いたらすぐにお部屋へ」という旅の常識は、ここでは少しだけお休み。チェックインのあと、希望すれば地元のガイドさんと一緒に、客室までのわずか3分の道のりを、ゆっくり約1時間かけて歩く“まちあるきツアー”に出かけることもできます。

時間のレイヤーを重ねて。細部に宿る、暮らしと美の記憶。

 「NIPPONIA 佐渡相川金山町」は、古民家を改造して作られた4棟7室の分散型ホテル。中心となる建物の客室に用いられているのは、かつて瀬戸物を焼き、販売していた町家。相川に残る典型的な長屋造りの建物で、通りに面した土間は店舗として、奥には神棚や階段を備えた住居空間が続いていたといいます。その伝統的な構造は、現代的なリノベーションの中にも丁寧に残されています。

 「ここにあるものは、できるかぎりこの家、この町の中から再利用しました」と語るのは、ホテルを運営する株式会社相川車座の雨宮さん。新しい壁材にも、佐渡を代表する樹木「アテビ(正式和名はヒノキアスナロ)」を利用。佐渡産の素材を選んでいます。

2025.05.28(水)
文=齊藤美穂子
写真=佐藤 亘