ドイツの現代写真家、カンディダ・ヘーファーの個展がイタリアのヴィチェンツァにあるビザッツァ財団で開催されている。1944年生まれのへーファーはデュッセルドルフ美術アカデミーのベルント&ヒラ・ベッヒャーのクラスで写真を学んだ。同じくベッヒャーの教え子のアンドレアス・グルスキーやトーマス・ルフとともに、いわゆる「ベッヒャー派」と呼ばれる一群の写真家を代表するひとりだ。
「ベッヒャー派」の写真に多く見られる特徴のひとつに、類型学的なアプローチがある。同じような形態の被写体をある決められたアングルで撮影する。それを数多く繰り返すことで、同じような被写体のあいだの違いを明らかにしていく。ヘーファーの場合、被写体に選ばれるのは劇場、図書館、宮殿といったパブリックな建築物の内部空間だ。大型カメラを使い、正面性を強く意識した構図で撮影されたカラー写真には、人間の姿はいっさい無い。また実際に建物内で使われている照明や窓からの自然光だけで長時間露光の撮影をするため、柔らかい光が画面全体に回った独特のトーンと色調が生まれている。そのコンセプトの確かさとプリントの完成度から、国際的な評価は極めて高い。
「私は人のいないときの空間が好きです。そうしたときの空間は、人々について、人々がその場所で行ってきたことについて、より多くのことを語ってくれるように思います」と彼女は述べている。
<次のページ> 圧倒的な描写力で隅々までクリアに撮影されたイメージ
2014.06.08(日)
文=鈴木布美子