この記事の連載

 昨年『水道水の味を説明する』(ナナロク社)を上梓した鈴木ジェロニモさん。ピン芸人としてお笑いの世界で活動しながら、短歌の世界でもさまざまな賞を受賞するなど注目を集めている彼は「言葉」の面白さをどう見つけているのでしょう? そして「短歌」「説明」という属性をもった「ピン芸人」ジェロニモさんのこれからとは?

» 「最初は誰が面白がるんだと思っていた」ピン芸人・鈴木ジェロニモの「説明」芸の成り立ち


「炭酸=さわやか」は本当か?

──短歌も「説明」も、言葉を通じて面白さを見つける行為だと思います。ジェロニモさん流の「面白さ」の見つけ方を教えていただきたくて。

ジェロニモ 最近の自分の傾向としては「本当性」みたいなものに興味があって、すごく面白いと思っています。

──「本当性」。

ジェロニモ たとえば、喫茶店の看板に「りんごソーダ発売中! 炭酸がさわやかです」と書いてある。それは本当だろうか、と思うんです。誰かが「炭酸=さわやか」という価値観を作ってそれが広まっているから、さわやかと書いているのではないか。

 子どもって、炭酸ジュースを飲んだとき「痛い」と言ったりするんですよ。それは、すごく本当だなと思うんです。「この感覚はこの言葉だよね」という、既存の表現への置き換えではない言葉には、すごく本当性がある。だから、日々面白い言葉を探しているというよりは、日常のどこに本当があるかを探していて、それに出会えたときにすごく嬉しいと思います。

──言われてみれば、例えば「好きです」という言葉も既存の表現への置き換えに近いかもしれません。

ジェロニモ 以前自分のラジオでまさにそういう話をしました。僕は告白することが苦手なんですよ。相手への好意や愛おしさは会うたびに募っていく。その感情は自分だけのものだったはずなのに、告白という段階で突然「このラッピングをしておけば間違いないから」というような「好きです」という言葉がそこに存在してしまう。言葉に先回りされていることへの恐怖感、違和感が、自分の中にはありますね。

2025.02.08(土)
文=釣木文恵
撮影=今井知佑