この記事の連載

ミステリアスな猫に夢中

――エッセイストの能町みね子さんの回も面白かったです。ライターのサムソン高橋さんと「結婚のようなもの」をされたお話がユニークで。

岡村 能町さんいわく、「一人でいることに飽きたから」と。一人で生活することや、生きていくことに限界を感じたと。お相手がゲイの方だから、恋愛ということではない関係がネクストステージというかネクストフェイズというか。あと、彼女は彼と生活をするようになってから猫を飼い始めたんですよね。

――メスの三毛猫、小町ちゃん。対談の頃はまだ飼ってなくて、「そのうち飼いたい」とおっしゃっていたのを実現されました。

岡村 能町さん、溺愛してます、御自分の猫を。

――岡村さんも猫を飼いたいといつもおっしゃっていますけど。

岡村 飼いたい。斉藤和義さんが猫をたくさん飼っていて、「猫も、杓子も。」っていうNHKのドキュメンタリー番組が面白いから観たほうがいいよと。僕、観たんです。めちゃめちゃよかった。でもあれでしょ、猫がいると毛だらけになっちゃうんでしょ?

――私も20年くらい猫を飼っていますが、そりゃもう毛だらけです。

岡村 毛だらけを乗り越えれば楽しい?

――はい。乗り越えれば毛は気になりません。

岡村 猫動画、よく観るんだけど、ものを落とすでしょう、猫は。これ見よがしに。

――飼い主の注意を引くために落とすんですよ。

岡村 僕に注目して! 

――そうです。ご飯ないぞ! とか、なんかちょっと撫でてくんない? とか。要求があるときにそれをやるんです。

岡村 Netflixでドキュメンタリーも観たんですよ。猫が何を考えているのか、という番組を。

――たぶん、食べることしか考えてない、と思いますけどね。

岡村 犬みたいな忠誠心はないんですか? ありがとう! みたいな。

――ないです。

岡村 いつもすいませんね、みたいなのもない?

――ないです。猫様ですから。

岡村 やっぱりミステリアスだなあ。

印象的だったオードリー・タンとの対話

――ミステリアスといえば、と強引につなげますが、モデル、俳優、歌手である小林麻美さんにもお会いしました。そして、岡村さんと交流のあるミュージシャン川谷絵音さんも。

岡村 小林さんはユーミン(松任谷由実)さんの親友で、その絆の深さがわかるエピソードがよかったし、絵音くんは文春の編集部にどうどうとやってきたのが面白かった。編集長に「その節はお世話になりました」なんて言われて(笑)。

――コロナ禍真っ最中のときに対談したオードリー・タンさんはとても印象深いものでした。

岡村 オードリーさんは当時、台湾のデジタル担当大臣をやっていて。台湾ではコロナを非常にうまくコントロールしていたでしょう。国民全員にマスクが行き渡るようなシステムを構築したり、ソーシャルディスタンスが守られる範囲でいち早くエンタテインメントも解禁して。その頃の日本はまったく何もできていなかった。ただただ家に居るだけだったし、僕らの仕事はストップせざるを得なかった。この状態はいつまで続くのか、いつ、どうなれば日常が復活するのか。そういったことがまったく見えない不安の中にいたから、オードリーさんとの対話は力づけられたし、ありがたかった。

――人間関係もエンタメも、すべてテクノロジーで解決できる、とおっしゃってましたもんね。

岡村 今回本を改めて読み返して思ったけど、この本はコロナ禍のドキュメンタリーでもあるなと。オードリーさんもそうだし、髙村薫さんとコロナ禍の世界をどう感じているかの話ができたのも有意義だった。オウム真理教の話にまで広がったのは面白かった。

2024.12.27(金)
文=辛島いづみ
写真=佐藤 亘