LOVE:ラーメン
幸せの三拍子、もっちり麺・澄んだスープ・ホロホロ美味な肉!
軽井沢|菊水
春になる少し前、所用で軽井沢へ出かけた。大雪の痕跡もまだしっかりと残る頃で、その風景は痛々しいほど。しかし、オフシーズンの軽井沢のちょっと静かな感じは大好き。そして、通年営業しているレストランは応援したい!
と、向かったのは、祖父が愛してやまなかった老舗の洋食店「菊水」。お店も客も代替わりしているが、若きオーナーシェフの齊藤亮介くんは変わらず親切にしてくれる。祖父は「これ」と決めたら「それ」しか食べない頑なな人だった。「菊水」に行ったらチキンカレーしか食べない。それどころか、同伴者にもチキンカレー以外のものを食べさせない。おかげで私は子供の頃は「菊水」ではチキンカレー以外食べたことがなかったので、大人になってからは当時食べたくて食べたくてしかたがなかったメニュー「チキンカツ」を食べ続けていた。
しかし、今回は違う! シェフのフェイスブックを見ていたら、「久しぶりにタンシチューを仕込んでいます」「期間限定でラーメンやってます」と書いてあったのだ。正直、「限定」には強い方。限定だから、というよりも、「食べたいもの」を食べる主義だ(このへんに祖父のDNAが!)。
駐車場の脇の雪山をのしのしと乗り越えてお店にたどり着くと、「げげげ」という顔のシェフ。フェイスブック上で探りを入れていたので「本当に来やがったな」という表情。「タンシチューとラーメンですよね、まだありますよ」と言いながら、迎えてくれた。
いやはや、久しぶりに悩んだ。限定には強くても、両方とも今を逃したら食べられないメニュー。チキンカツも食べたいけど、タンシチューも、ラーメンも、でもチキンカツも……。というわけで、最近胃が加齢に負けつつある私、全部は無理と判断し、「ちょっと小ぶりのタンシチューとラーメン。あ、タンシチューにごはんなしとかあり得ないから」ということで決着。
まずいただいたのはタンシチュー。数日前からちゃんと仕込んでいるというだけあって、それはそれは素晴らしいタンシチュー。牛タンはふくふくと煮え、デミグラスソースはちょっとビターな、キャラメルを感じるような奥深いものであった。美味しいごはんがお皿で添えられるのが街の洋食屋さんっぽくてうれしい。最後はタンシチューのお皿にごはんを移動させ、一滴残らずいただいた。
2014.04.30(水)
文・撮影=北條芽以