「BIG GAME‘79」の芸術的「エピタフ」

 そう思っていたら、本当にコンサートのスタートは、バーモントカレーのCMからであった。何パターンもの、子どもたちとカレーを食うヒデキを愛でたあと、1本目のフィルム、1979年8月18日に大阪球場で開催された「BIG GAME '79 HIDEKI」がスタート!

 ヒデキはバイクと共に、焼けた素肌に白いテープを貼り付けたようなジャンプスーツで登場。控えめに言って超セクシー!

「ヒデキィィィ!」

 さっそくサイリウムを振る。

 クイーンの「ウィ・ウィル・ロック・ユー」から始まり、前半は洋楽まみれ。ビリー・ジョエルの名曲「オネスティ」の日本語カバーもいいが、やはり特筆すべきはキング・クリムゾン「エピタフ」の魂のパフォーマンス!手脚、指、筋肉を一本一本ゆっくり動かし、肉体の神秘を見せつける動きはダンスの域を超え、もはや芸術。パリ・オペラ座バレエ団、なぜスカウトに来なかった!?

 ヒデキがゆっくり背中を向けた瞬間、演出のレーザービームが空に向けて飛ぶ。位置的に、ヒデキの脳天から出ているように見えるのがまたエモい!

 彼は「エピタフ」で1万キロカロリーは消費していると思う(個人的推定)。どこからか「1曲にこんなにパワー使って大丈夫なの(泣)」と呟きが聞こえたが、マジでパワー配分大丈夫??

 パフォーマンスは激しいのに、MCは、とってもかわいいヒデキ。

「こーんばーんわー!」

 ヒデキの呼びかけに、

「こーんばんわー!」

 と元気に返す私たち。こちらは昼間なのだが、んなことはいいのだ。もはや「フィルムコンサート」という意識もぶっ飛んでいる。Zepp Nambaは今、1979年、夜の大阪球場にタイムトラベル完了しました!

ザ・コンテナダンサーズ&ヒデキのゾーンに入ったツーステップ

 さて、この年とても楽しいのがコンテナタイムである。

 コンテナタイム――。それは、大型トレーラーのコンテナを移動ステージに見立て、客席近くまで行くというニクイ演出である。しかもノリのいい曲が選曲され、その名も「ヒデキ ディスコ スペシャル」! ヒデキと一緒にコンテナタイムを盛り上げるのが、素晴らしいスタイルをした外国人の女性ダンサー2人。お名前が分からないので、リスペクトを込めて「ザ・コンテナダンサーズ」と呼ぶことにしたい。

 クッ、ヴィレッジ・ピープルの名曲「ゴー・ウエスト」からの、ヒデキヒット曲メドレーという最高のセトリは何度聴いてもいい! Zepp Nambaも大阪球場も興奮のるつぼ。私の前後左右の皆さん、サイリウムをプロペラのようにぶん回しながら一緒に歌っている。「ブーツをぬいで朝食を」でヒデキがダンサーの方とエロチックな絡みを見せたとき、ギエエエエという悲鳴が響くのもナイス臨場感。

 私の一番の萌えポイントは、「ブーメランストリート」を歌い終わったあと、急にアドレナリンが噴出し、地団太を踏むようなハイテンション・ツーステップで魅せるヒデキだ!

 そして彼は、散々しゃがんだり回ったりした挙句、手に粉をつけ、命綱なしで空中ブランコをつかみ舞い上がり、ステージまで戻っていった……。

 数々のミラクルパフォーマンスに、見ているこちらも心のネジが外れる。その後、「ホップ・ステップ・ジャンプ」「セイリング」など、最後まで大合唱になったことは言うまでもない。

2024.10.20(日)
文=田中 稲