今月のテーマ「ひとりめし」

【MAN】
口に入ればなんだっていい、これぞ独身男性のリアル

 テレビドラマ化もされた傑作グルメ漫画『孤独のグルメ』の主人公は、外回り仕事の関係でひとりめしをする機会が多いというだけで、孤独な人生を送っているわけではない。だが、『鬱ごはん』の主人公は、リアルに孤独だ。しかも、グルメじゃない。

 故郷を出て、東京で独り暮らしするフリーターだ。友達もいないし彼女もいないから、いつも独りで外食かコンビニ飯。そもそも、人と一緒に食事をすることが苦手で、「食事とは本来排泄と同じく隠されるべき行為なのではないだろうか?」。独り遊びの手段として料理めいたこともするが、「何を食べても美味しく感じられない」。彼にとって食事は、機械的にこなしていかなければならない、生存活動にすぎない。自分で自分に与える、エサだ。

 これぞ独身男子の、真実の姿。いや、家で一緒に食事する相手がいない人ならば、誰もがどこかでそんな気持ちを持ち合わせているのでは?

『鬱ごはん』 施川ユウキ

食をテーマにした漫画にもかかわらず、美味いの一言は出てこない。回転寿司に行く回(第5話)では、何をどの順番で食べようか悩んだ挙げ句、やっと選んだひらめを口にして脳内で一言、「うん! 普通!!」。食がもたらす幸福感を一切期待しない感じが、いっそ心地よい。
秋田書店(既刊1巻) 580円
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2014.03.04(火)
文=吉田大助

CREA 2014年3月号
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この記事の掲載号

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