フィギュアスケートの選手としてずっとライバルであり親友同士だった塩澤と志藤。引退してデザイナーとなった塩澤の、変わらず第一線で活躍する志藤への想い。英語タイトルの「Kiss and Cry and Lie」が内容にピッタリでした。友情ものか恋愛ものかと思っていたらサスペンスもあってドキドキでした。初めて読んだ作家さんでしたがとても良かったです。
岡本書店恵庭店 南聡子さん
スポットライトを浴び続ける者、別のスポットライトを見つけた者、スポットライトを見失ってしまった者、それぞれの葛藤が痛いほどよく描かれていた。
明林堂書店南宮崎店 河野邦広さん
時代の双璧を成した二人のスケーター。一人は引退し別の世界へ、一人は今なお現役で輝きを放ち続けていた……。
各々の、それぞれの時期での選択、葛藤が粒やかに描かれる中で、謎とされたある出来事が明かされていく。部外者が距離を置いてみればただのすれ違いと一蹴されそうなコミカルさを感じる一方、すれ違いや勘違いの危うさをリアルに示していく。
急転直下の解明と結末が安堵をもたらす逸品。
アバンティブックセンター宝塚中山店 前田寿子さん
読み始めの不穏な出来事がどこに繋がるのかわからないまま、どんどん話が進み、忘れかけていた頃に急展開してドキドキしました。
同時代を競い合ったフィギュアスケーター3人のそれぞれの視点から、物語が語られるのですが、一人称が使われず、あくまで登場人物と第三者の視点といった形で話が展開していくところが、新鮮でした。
世間の個人の見方はいい加減なもので、人の内面は儚く脆い。たった1人でいいから、心ごと抱きしめてくれる人の存在を得ることが、生きる糧になり得る。たとえ、失うかもしれないという不安がつきまとうものであっても。
とても誠実な人間愛を感じました。
キスに煙
定価 1,870円(税込)
文藝春秋
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2024.02.06(火)