子どもの頃は人見知りマックスだったけど「今は人に興味がある」

――本作は2024年1発目である1月5日公開です。ここまでの道のりで、ご自身の俳優としてのフェーズの意識等はいかがですか?

 どれくらいの世の中の認知度があるのか、自分が思う表現にどう近づいているのか等々、どの方面から見るかによって変わるかと思いますが、自分の中ではフェーズ的な意識はあまりありません。ただ、経験値を重ねていくと同じものを観ていても見え方は変わってきますよね。過去と似たような性質の役が来たときにどこか見慣れた色合いに映ってしまうこともありますし、でもそんな今だからこその楽しみ方だってあるでしょうし。その時々の自分に応じたインプットとアウトプットの仕方があると思いますが、芝居をしているときの好奇心だけは保ち続けたいと思っています。つまり、未来を見据えたフェーズという意識よりも、今をどう満喫するかに重きを置いている気がします。

――となると、モチベーションの維持なども特にご苦労されることはなく、でしょうか。

 そうですね。もちろん考えることはしますし、考える行程を経ないと惰性になってしまうとも思っています。ただ、シリアスになることはあまりないです。いつかそういう時期が来るかもしれませんし、そのときに深刻になるかもわかりません。そこも含めて楽しんでいければいいな、とは考えています。

――岡山さんのこれまでの道のりのお話を伺っていても、『笑いのカイブツ』を観ていても、人との出会いに付随するコミュニケーションの大切さを感じます。ツチヤは対人コミュニケーションが苦手でなかなか才能を発揮できませんが、岡山さんは俳優業においてのコミュニケーションをどう捉えていますか?

 僕でいうと、現場なりポジションにおいて変わってくるところがありますが、大前提として人って基本的に自分のことしか知りませんよね。だからこそ、他の人が何を感じているのかにすごく興味があります。自分の人生を幸せなものにするためには人のことを知るしか方法がないと思うから、他者に惹かれますし、左脳的に論理的なアプローチするというよりも単純に興味の赴くままに接することが多いです。やっぱり俳優部って突出した方が多いので、余計に興味をそそられるのかもしれません。

 コミュニケーションってどうやっても難しいものですし、僕自身は悩んでも解決しようともしていません。厄介なのが前提なので、それ込みで楽しむことでストレスから逃げています。ただ、ツチヤの気持ちもすごくわかるんです。僕も子どものころは人見知りマックスでしたし、誰かと対面する中でどう自分を維持するかでいっぱいいっぱいで、当時は他人に興味なんて抱けませんでした。そういった意味では、(ツチヤと)元の形は似ているように思います。

岡山天音(おかやま・あまね)

1994年6月17日生まれ、東京都出身。2009年に『中学生日記シリーズ・転校生(1)〜少年は天の音を聴く〜』でデビュー。NHK連続テレビ小説「ひよっこ」、「最愛」、映画『キングダム』『BLUE GIANT』などの作品に出演。

映画『笑いのカイブツ』
2024年1月5日(金)テアトル新宿ほか全国ロードショー

「伝説のハガキ職人」として知られるツチヤタカユキの同名私小説を原作に、笑いにとり憑かれた男の純粋で激烈な半生を描いた人間ドラマ。

岡山天音
片岡礼子 松本穂香
前原滉 板橋駿谷 淡梨 前田旺志郎 管勇毅 松角洋平
菅田将暉 仲野太賀
監督:滝本憲吾
原作:ツチヤタカユキ『笑いのカイブツ』(文春文庫)
脚本:滝本憲吾、足立紳、山口智之、成宏基
企画・制作・プロデュース:アニモプロデュース 
配給:ショウゲート、アニモプロデュース 宣伝協力:SUNDAE
🄫2023「笑いのカイブツ」製作委員会
https://sundae-films.com/warai-kaibutsu/

笑いのカイブツ

著 ツチヤタカユキ
定価 858円
文春文庫
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2024.01.03(水)
文=SYO
撮影=佐藤 亘
ヘアメイク=森下奈央子
スタイリスト=岡村春輝