撮影前に「プランA」を考えるのは好きじゃない

――岡山さんの出演作は今年も数多くありましたが、役によって出番は様々です。与えられた時間のなかでどう役が背負う人生を表現しているのか気になっていましたが、そうした思考が根底にあるのですね。

 俳優の中には「それ関係ある?」という部分まで描かれない背景を作りこんでくるオタクのような方もいらっしゃいますから、自分がどの程度かはわかりません。ベースは皆さんそうだと思いますし、そういう仕事だとも思います。ただ、自分はその比重が大きい方ではあるでしょうし、大事にして活動を続けてきました。

――本作での演技の出力について、監督から「もっと欲しい」或いは「抑えてほしい」というようなリクエストはありましたか?

 そういったものは特になく、全部含めて面白がってくれました。俳優の頭の中であったり、やろうとしていることを軸に「どうやったらこの世界に収まり、成立するのか」を作ってくれる方でしたね。絶対その方が難易度が高いでしょうから、有難かったです。コントロール下に置きながらその範囲で役者にやってもらう方が楽なのに、好き勝手やらせていただけたことに感謝しつつ、思う存分楽しませていただきました。

――となると、シーンによっては色々なパターンを岡山さんの方で試してみる、というようなこともあったのでしょうか。

 ただ、僕は前日に「明日撮るシーンはこういう風にしよう」と考えておいて、本番でプレゼンするアプローチがあまり好きではなくて。現場だと同じシーンを別の角度から撮るため何回も同じセリフを繰り返すことにはなるのですが、共演相手が仮に同じように来たとしても、その瞬間に敏感に反応することを大事にしていきたいと思っています。そのため、プランA・Bといった形で事前に準備していくというより、その都度臨機応変にやってみた、という感覚です。

――そうした意味では、菅田将暉さんと仲野太賀さんは絶好の相手ですね。

 そうですね。タイプは全く違うお二人ですが、生きた芝居をされる先輩方なので本当に頼りがいがありましたし、刺激的でした。

――居酒屋でツチヤが苦しみを吐露するシーン、強烈でした。あれは何回もできる芝居じゃないなと。

2024.01.03(水)
文=SYO
撮影=佐藤 亘
ヘアメイク=森下奈央子
スタイリスト=岡村春輝