『キングダム』『BLUE GIANT』『クレイジークルーズ』、そしてドラマ10本弱に出演……。2023年も大車輪の活躍を見せた岡山天音。彼が主演を務めた『笑いのカイブツ』が、2024年1月5日に劇場公開される。

 彼が本作で演じたのは、ハガキ職人・ツチヤ。狂気と呼べるほどのお笑いフリークであり、その才能は突出しているものの突き詰めすぎて周囲から拒絶されてしまう。七転八倒しながら生き抜いていくツチヤの壮絶な生命力を、全身全霊で演じ切った岡山。彼の語る演技論は、クレバーとパッションが絶妙にブレンドされたものだった。

 菅田将暉、仲野太賀との共演エピソードを交え、撮影の舞台裏と共にお届けする。

――本作の情報解禁時に、岡山さんが「何とか生き延びた」とコメントをされていたのが印象的でした。全編エネルギーを放出し続けるような役どころでしたが、ご自身の中でどういった部分がチャレンジングでしたか?

 まずこういった主人公像を他のドラマや映画であまりみませんし、そこをどうデザインしていくか――作品の中でツチヤという人物の多面性、その一面一面をどう露わにしていくかの設計段階からチャレンジングでした。最初は観ている方が嫌悪感を抱くようなところから始まって、最後には距離がぐっと近づいているようなキャラクターを1本の線で表現することは、僕の人生ではあまりなかったように思います。滝本憲吾監督も「最初は近寄りがたく、速度が出すぎたキャラクターだけど、最後はお客さんが乗れるようなものにしたい」とおっしゃっていました。

――いま岡山さんが話された「役の設計」は、作品に臨むうえでのルーティンなのでしょうか。

 そうですね。僕たちはキャラクターの人生の一部分を切り取って演じるわけで、描かれない部分も意識しながら「どういう順を追ってどこに着地するのか」という流れに沿って作るのは、正攻法だとは思っています。

2024.01.03(水)
文=SYO
撮影=佐藤 亘
ヘアメイク=森下奈央子
スタイリスト=岡村春輝