「母さん、ちょっといすぎだよ」入院している時間を支えたのは…
入院してすぐの頃は、定年退職した母が愛知から上京し、私の面倒を見てくれました。私の東京での住まいが病院から近かったこともあり、母はそこで寝泊まりし、病院に通ってくれたのです。母は、久しぶりに私の世話を焼くことに熱中していました。
「母さん、ちょっといすぎだよ」
「こんなにしょっちゅう、くっついていなくてもいいよ」
そう伝えても意に介しません。妹が急死した時に何もしてやれなかったという思いもあったのでしょう。「今度は絶対に目を離さないぞ」という執念が感じられました。
パジャマは母が買ってきてくれました。母親というのは何歳になっても娘にピンクや赤を選ぶのですね。赤い花柄にレースの襟がついたパジャマを持ってこられた時は、「コスプレよりきつい」と思いました。
私はホルター心電計を装着していなければいけないので、「これを入れられるポケットをつけてほしい」と言うと、母は手作りのポケットをパジャマに縫い付けてきてくれました。赤い花柄のパジャマにモノトーンのペイズリー柄のポケットをつけたセンスはわからないけど、ありがとう母さん。
2023.12.02(土)
著者=後藤邑子