活躍する同世代に感じるコンプレックス

──もうひとつ、ぜひ伺いたいことがあって。最近、小御門さんと同世代、20代後半から30代前半の劇作家、演出家の方が注目を集めていると思いますが。

 ありがたいことに、僕は今、いろんな身に余る仕事をやらせてもらっていますが、やはりダウ90000の蓮見翔さん、た組の加藤拓也さんといった方々の作品を見ると……。内容として、自分よりもストロングスタイルな、真ん中なものをやってらっしゃるのを見ると、「やられた」という思いになることがありますね。

 僕の周りには技術に強い仲間たちがいて、ノーミーツで他の団体にはできないようなことをやれるのは自分たちの強みだし、自慢です。でも同時に、それに対するコンプレックスもずっとあって。「そうやって下駄を履かないと目立たない」とみんなが思っているのではないかという……。

――そんな! 

 僕のほうは、活躍する同世代の方をめちゃくちゃ意識しています(笑)。それこそ、ノーミーツって最初は当時のTwitterに短い動画をちょくちょくアップしていたんです。でもだんだん作品規模が大きくなって、いまは公演が半年に1本ペースになっている。そうなると、皆さんに一旦忘れられてしまう。毎回「お久しぶりです」から始めることになってしまうんですよね。

 でもたとえば、ダウ90000は演劇もやりながらコント師の側面もあるので、断続的に出ていられる。「本多劇場で公演やります」の大砲も撃てるし、「YouTubeにネタ上げました」とポンと伝えることができる。世間にダウ90000の存在を意識させ続けられるのは強いなあと……。

――率直な思いを話してもらえてありがたいです。今後の小御門さんを楽しみにしています。最後に、今回の作品にちなみ、最近よく聴いているラジオ番組を教えてください。

 もちろん、『オールナイトニッポン』を楽しく聴いています。ただ、ごくたまに、オールナイトニッポンを担っているトップランナーの皆さんが自分にはあまりにも眩しすぎるなと感じるときもあって。そんなときは、『真空ジェシカのラジオ父ちゃん』(TBSポッドキャスト)と『春とヒコーキのグピ☆グパ☆グポ』(GERA)に逃げています。あの2組のトークは、大学のサークルで溜まっていた頃を思い出して、心安らぐんですよ(笑)。

小御門優一郎(こみかど・ゆういちろう)

1993年生まれ。主宰の1人として劇団ノーミーツを旗揚げし、多くの作品の作・演出を務める。第三回公演『それでも笑えれば』で第65回岸田國士戯曲賞ノミネート。YOASOBI「三原色」の原作小説や、リアル脱出ゲームシナリオ、Webドラマ脚本などフィールドを拡大しながら活動している。

『あの夜であえたら』

2023年10月14日(土)・15日(日) 東京国際フォーラム ホールA

“ご存知の通り、この番組はもう終了することが決まっています――”。終わりを迎えるひとつのラジオ番組と、終わらない「あの夜」の物語。
出演:髙橋ひかる/中島歩 工藤遥 入江甚儀 井上音生 高野ゆらこ 渡辺優哉 小松利昌/山口森広 吉田悟郎 山川ありそ 鳴海唯 相田周二(三四郎)/千葉雄大
製作総指揮:石井 玄 脚本・演出:小御門優一郎 監修:佐久間宣行/主題歌:Ado
https://event.1242.com/events/anoyoru2/

Column

TALK TIME

ゲストの方に気になる話題を語っていただくインタビューコーナーです。

(タイトルイラスト=STOMACHACHE.)

2023.10.12(木)
文=釣木文恵
撮影=榎本麻美