●名門バークリー音楽大学で映画音楽を学ぶ

――映画音楽に対する憧れは、どこで生まれたのでしょうか?

 90年代~ゼロ年代前半のアメリカ映画のサントラが好きになったんです。感動するだけでなく、曲単体としての魅力や、気持ちのいい音楽性や、気分が盛り上がるという意味では、例えば、ハワード・ショアの『ロード・オブ・ザ・リング』やジェリー・ゴールドスミスの『13ウォーリアーズ』。

 あとはジェームズ・ホーナーの『レジェンド・オブ・フォール/果てしなき想い』など……。日本のアニメ音楽やゲーム音楽もよく聴いていましたが、さすがにそれを学べる音楽学校は当時のアメリカにはありませんでしたから……(笑)。

――その後、名門バークリー音楽大学の映画音楽作曲科に入学し、本格的に映画音楽を学ばれます。

 私は楽器を演奏するパフォーマーではなく、楽曲を制作する作曲家を目指していたので、ギターやピアノといった楽器はそこまで上手くなかったんです。入学試験は実技と面接があるんですが、実技で落ちてしまい、バイトをしながらお金を貯め、翌年に再受験しました。

 専攻は映画音楽だったのですが、バークリーという学校はジャズ系の音楽をやる人が多いので、自然とジャズのハーモニーの作り方も学んでいきました。

――大学卒業後に、観光ビザで来日されたそうですね。

 バークリーでプロの作曲家や音楽家が特別講師として講義をされるなか、魅力的で素敵な作曲家なのに、長年テレビや映画など大きな仕事をしていないという方から、いろいろな話を聞きました。実力だけでは、仕事を得るのも難しいことを知り、それで「このままハリウッドに行っても、20年間アシスタントの仕事しかできないかもしれない……」という不安に襲われました。

 そんなとき、日本人の友人が「日本の方が若い作曲家にチャンスを与えてくれる環境かもしれない」と言ってくれて、その言葉を信じて、日本に行く決心がつきました。

2023.09.29(金)
文=くれい響