
前篇では『私の夫と結婚して』の撮影の様子や、小芝さんが演じる主人公・美紗の心情などを紐解いていただきましたが、後篇では今年上半期の話題をかっさらったと言っても過言ではない、NHK大河ドラマ『べらぼう』で演じた瀬川の役についても伺いながら、小芝さんが考える“愛のカタチ”やプライベートでハマっていることなど、ご自身の振り返りながらお話しいただきました。
》【前篇】「復讐を選ぶというのは“茨の道”」小芝風花が、もう一度人生をやり直せるならしてみたいこと
「“循環する”対等な恋愛が理想」

――『私の夫と結婚して』は“復讐”というのがテーマのひとつでもありますが、小芝さんが25年前半にご出演されたNHK大河ドラマ『べらぼう』の瀬川という役では、“相手のために身を引く”という選択をしました。それぞれの役から学んだ“愛のカタチ”はありますか?
なんと難しい質問!(笑)美紗に関しては、それまでは自分の人生なのに、自分が主役ではない人生を送っていたわけなので、「自分の人生は自分のモノ」という考えがまず根本にあると思います。自分の力で人生を切り拓いて、幸せをつかみ取る。自分の人生を取り戻すのだというのが軸にあります。
一方で、瀬川は愛する人の夢のために最善の策を取る――。難しいですよね。どっちがいいわけでもなくて、両方素敵な愛のカタチですから。
――どちらの気持ちも共感はできますか?
そうですね。なかなか両方とも高度なので、いざ自分ができるかと言われたら難しいと思いますが……。無償の愛だったり、相手を優先する愛だったり、いろんな愛の定義があるじゃないですか。そう考えると、自分の“愛のカタチ”って何だろうって考えちゃいますね……。
でも、私は“対等”がいいです。与えられるだけも、与えるだけもつらいから。よく「本当に相手を思っているなら見返りは求めない」という考え方がありますが、私は見返りがちゃんと欲しい(笑)。貰ってばかりだと罪悪感を覚えて、申し訳なく思ってしまいそうですし、与えているだけだと自分の心が枯渇してしまう。
相手にこんなふうにしてもらって嬉しかったから、自分も返したいという気持ちが生まれると思うんです。その気持ちの“交換”がいいんですよね。
――今回の作品では現代の女性でしたが、『べらぼう』では吉原にいる花魁という特殊な職業の女性を演じられました。難しい役どころですが、どんなふうに向き合われましたか?
すごく丁寧に心情を描いてくださっていた脚本だったので、台本と向き合ったというのが一番大きいです。読んでいるだけで何回も泣いてしまったくらい。本当に「瀬川」は感情移入してしまう役柄でした。
時代的にも、現代とはまったく違った環境で、子どもの頃に売られて、その世界で生きるしかなかったという人。その中で、朝顔お姉さん(愛希れいかさん)に出会えたというのが、瀬川にとっても蔦重(横浜流星さん)にとっても大きな意味があったと思います。
「正解が分からないのなら、誠が分からないなら、飛び切りいい想像をしようよ」と言ってくれたお姉さんでしたから。苦しいことがほとんどの世界で何とか前を向けたのは朝顔お姉さんのお陰でしたし、瀬川にとっての光は蔦重だったので、その思いだけは大切に演じたいなとずっと思っていました。
――美紗と瀬川のように、役柄が大きく異なり、また撮影期間が近かったりすると、メンタルのスイッチが大変ではありませんか?
“切り替え”という面ではあまり「前の役が抜けない」というのはないのですが、瀬川など、自分がすごく感情移入したり、好きだった役柄は撮影が終わってしまうと“喪失感”があります。
次の作品が迫っているから、早く忘れて次に向かわなくてはいけないのに、「もう演じれないんだ、寂しいな」というのは、特に瀬川に関しては、すごく思いました。最後まで素敵な瀬川だったので、その思いもひとしおでしたね。
2025.07.19(土)
文=前田美保
撮影=榎本麻美
ヘアメイク=青山佑綺子(BOND)
スタイリスト=小川未久