二〇〇四年秋、光原さんに招かれて尾道大学(当時)で講演をしたことがある。教え子である学生さんたちも交えて街を散策したり、皆さんと夕食をご一緒したりもした。
講演を終えた日、私は尾道泊まり。駅近くのホテルのティーラウンジでしばし光原さんとお茶を飲みながら、講演について振り返るなどした。どんなことを話したか思い出せないのが残念だ。私が雑談に持って行ったのだろう。
大学関係の人らしい光原さんのお知り合いがラウンジを出入りするたびに、「こんばんは」「お疲れさまです」と挨拶を交わすので、ここは光原さんのホームなのだな、と意識した。思えば、光原さんと会うのはいつだって東京か関西で、二人で話す機会はなかった。いつもまわりに何人もの人がいて、みんな笑顔だった。
何を話したかは覚えていないが、あの尾道の宵(よい)、ふだんより寛いだ雰囲気に光原さんが包まれていたのが忘れられない。窓の向こうは瀬戸内の海だった。
2023.07.31(月)