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20代後半で突然仕事を辞めて無職に

――最初は何から始めたのですか。

井田 休日にイラストを描くところから始めました。画材を手放していたから、手元にあったコピー用紙にミリペンで描き始めたんです。だから、初期の作品はモノクロ作品ばかりが並んでいます。

――描いたイラストはどうしたんですか?

井田 完成したらpixiv、その次にSNSでもアップするようになりました。少しずつ活動の幅を広げていたら「展示してみませんか」と声をかけてもらえて。それでコミティアなどに参加するうちに欲が出てきて「もともと私、絵を描く仕事に就きたかったんだよな」って。イラストレーターでも漫画家でも、「なれるかわからないけど、やっぱりなりたいな」という気持ちが膨らんでいったんです。

 退職を意識するようになり、絵の時間をもっと作れないかと転職活動も始めたころが、会社で参加していたプロジェクトが終わった時期で。面談で「来期からこのプロジェクトに参加してください」と言われた時に、「今辞めないと、辞めるタイミングを逃してしまうな」と思って、退職を願い出ました。

――イラストレーターとしての仕事が決まる前に、退職されたのでしょうか。

井田 そうです。20代後半で無職になりました。

――ご家族が心配したのでは?

井田 心配したと思います。でも絵に関わる仕事がしたいというのは幼いころからの夢だったので、何も言われなかったですね。

 会社を辞めてからは1年ほどかけて作品数を増やして、いろんな人に自分のことを知ってもらおうとイベントや展示会に積極的に出展しました。そうしているうちに新宿のThe Artcomplex Center of Tokyo(アートコンプレックスセンター)での個展のお話をいただいて。個展を機に開業届を出して、イラストレーターとして営業を始めました。

 比較的安定して絵のお仕事をいただけるようになったのは、ほんの数年前のことです。

2023.05.26(金)
文=ゆきどっぐ