この記事の連載

これからも自分が好きなモチーフを追い続けたい

――夢を叶えていったところがすごいです。イラストレーターとして目標にしている方はいますか?

井田 たくさんいるんですが、改めて絵でやっていこうと決意した時に影響を受けたのは、『赤毛のアンの手作り絵本』(白泉社)の挿絵を担当された松浦英亜樹さんですね。この方の作品は少ないので、ご存じの方は多くないかもしれません。

 もともと幼いころから大好きな絵本で、母の蔵書でした。今は譲ってもらって私の本棚にあります。部屋のこまごました描写、きれいな配色。生活に密着したものを表現する面白さが感じられます。

――読んでみたいです。ほかのイラストレーターさんたちと差別化するために、井田さん自身が心がけていることはありますか?

井田 私は何でも描けるわけでもないし、美術系学校の出身ではなく専門的な土台もないので、好きなものを突き詰める方が強みになると思っています。だから自分が好きだと自覚した生活回りのモチーフを今後も大切にしていきたいですね。それがきっかけで、今作のような機会もいただけたので。

 その上で、イラストに描かれた世界が遠い存在ではなく、読者の生活と近い距離で観ていただけるバランスを目指したい。モチーフに対して、「かわいいな」という憧れだけじゃなく、読者が自分の生活と重ね合わせた時に「私の生活もいいもんだな」と思えるような作品にしていきたいです。

――ありがとうございます。最後に、読者にメッセージをいただけますでしょうか。

井田 コミック&イラスト集『家が好きな人』では、大きな事件は起こりません。だからこそ、疲れている時も、眠る前も、元気な時も、サラッと読んでもらえる作品です。生活の傍らに置いていただけると嬉しいです。

インタビュー【前篇】に戻る

家が好きな人 (リュエルコミックス)

定価 1,870円(税込)
実業之日本社
» この書籍を購入する(Amazonへリンク)

井田千秋(いだ・ちあき)

書籍の挿絵、装画などを手掛けるイラストレーター。2023年2月に上梓した『家が好きな人』(実業之日本社)が累計発行部数10万部のベストセラーとなる。著書はほかに『わたしの塗り絵BOOK 憧れのお店屋さん』(日本ヴォーグ社)など。児童書では『へんくつさんのお茶会』(学研プラス)、『ぼくのまつり縫い』(偕成社)シリーズなどの挿絵を担当する。自主制作では、架空の部屋・生活シーン・家具などのモチーフを好む。
Twitter @dacchi_tt
Instagram @dacchi_tt

次の話を読む「早起きに成功したらポテサラをアレンジして…」『家が好きな人』ササさんの「朝のパン」

← この連載をはじめから読む

2023.05.26(金)
文=ゆきどっぐ