KYOTOPHONIEという新たなチャレンジ

 そうではなくて、やっぱり人々が何か感じたり、そこにバイブスであったり、興奮したりリラックスしたりしてもらえるような生の体験の価値を作り出していきたかったのです。パンデミックが人々にもたらしたあの得体のしれない恐怖を、音楽の力で解消できないものかと考えていました。そんなこともあって、去年の夏にヨーロッパを中心に様々な音楽フェスティバルを回ってみて、これはKYOTOGRAPHIEの姉妹プロジェクトとして立ち上げるべきだと確信を持てたのです。

 それから20代前半の頃に仕事を通じて知り合っていたミュージシャンを含む様々な音楽関係者に声をかけはじめたのですが、みんな今は名を馳せて立派になっていて。彼らの協力も得て、無事にスタートを切ることができました。

 KYOTOPHONIEもただのミュージックフェスティバルを目指しているのではなく、やっぱりユニークなフォーマットであることを大事にしています。KYOTOGRAPHIEとアプローチは似ていて、我々がまずしっかりと価値を見出した音楽をピックアップして、京都の街全体を会場に見立てて、普段はライブをやらないような場所でパフォーマンスをしてもらったりしています。このフォーマットが働いて人々に幸せをもたらしている様子はなんだかマジックのようで、自分たちは正しい方向に向かうことができているね、とちょうど昨夜祐介と話していたところでした。

 KYOTOPHONIEは立ち上げからBOTTEGA VENETAがパートナーとしてサポートしてくれており、それがあってはじめて実現できているエッジな企画も多々あります。KYOTOGRAPHIEで築いたものを土台にして新たなチャレンジをするにあたって、そこの土台のコンテクストから理解・共感した上で同じ方向に向かって並走してくれるスポンサーの存在は本当に貴重で有り難いです。

2023.05.02(火)
文・撮影=山本憲資