平成14年度(2002年度)から令和2年度(2020年度)にかけて、公立学校の数がなんと8580校も減少した。そして、施設が現存する廃校のうち活用されていないものは25.9%。数にして、なんと1917もの校舎が何の利活用もされず、そのままの状態になってしまっているというわけだ。少子化が進む日本なだけに“廃校施設”の有効活用は、国が抱える重要な課題の一つと言えるだろう。

生まれ変わる廃校

 そんななか、旅行好きの人、美食家から熱視線を集める廃校活用施設が石川県小松市観音下町(かながそまち)に誕生した。オーベルジュ(*1)「Auberge “eaufeu”(オーベルジュ オーフ)」だ。開業は2022年7月。取材時はオープンからわずか4ヶ月しか経っていないタイミングだったものの、すでに全国各地から来客があり、複数回訪れている宿泊客も少なくないのだという。

*1 その土地ならではの食材を使った料理とお酒を堪能できる宿泊施設つきレストラン

 日本経済新聞が紙面で「『廃校の宿』10選」を特集するなど、廃校を活用した飲食・宿泊施設自体は、いまや珍しいものではなくなった。にもかかわらず、Auberge “eaufeu”が注目されているのはなぜなのか。ここでは、現地を探訪した際の様子を紹介していく。

 JR小松駅から車でおよそ20分。圃場に囲まれた山里を走らせていると、自然豊かな風景の中にモダンな建物が見えてくる。平成30年3月をもって廃校となった小松市立旧西尾小学校をコンバージョンしたAuberge “eaufeu”だ。

 かつての写真と見比べると、構造そのものには大きな変更がなされていないことがよくわかる。しかし、雰囲気はまるで違う。卑近な言葉になってしまうが、なんとも“素敵”なのだ。

 

一変した元・小学校の姿は…

「県外から来た私たちが住民約70人の限界集落で新しいものを作っていく。いろいろな農家さんを訪ねて教えていただいた、この土地ならではの美味しい食材でお客様をおもてなしするという考えがベースにあります」(広報・サービス担当 赤地真歩さん)

2023.01.21(土)
文=「文春オンライン」編集部