贅沢な食事を楽しむのは、旅先での大きな楽しみの一つではある。ただし、宿泊先とレストランが近くにあるとは限らない。その点、食事をじっくり堪能した後、そのまま上階の部屋へ戻ってゆっくりできるというのも、オーベルジュならではの嬉しいポイントといえるだろう。
シェフは日本最大級の料理人コンペティション「RED U-35」において、史上最年少の当時26歳でグランプリを受賞したという華々しいキャリアを持つ糸井章太さん。
京都で生まれ、日本をはじめ、フランス、アメリカで修行を積んだ糸井さんが、縁もゆかりもなかった石川県にオープンしたオーベルジュのシェフに就任したのにはある理由があった。
石川県と縁のないスタッフたちが小松市に移住したワケ
「もともと、糸井は北欧の3つ星レストランで働く予定だったんですが、そのタイミングでコロナ禍になってしまって、ビザが下りなかったんです。
それと同時期に偶然、石川県の小松市・観音下町で総料理長にならないかと声をかけられたのが、すべての始まりでした。
現在は閉店した前職のレストランで働いていたスタッフを糸井が引き連れて、『Auberge “eaufeu”で一緒に働こう』と。そのような経緯で、働くスタッフが小松市内に移住してきたというかたちです。移住となると、なかなかハードルを感じるように思うのですが、それでもついて行きたいと思えるほど糸井が魅力的なシェフだということでしょうね」(ソムリエ 朝倉達也さん)
「今まで国内外いろんなところで暮らしてきたんですが、日本で地方に住むのは小松が初めてで。ここはとにかく過ごしやすいですね。5月くらいに引っ越してきたのですが、人間関係も築きやすく、食材も豊かなんですよ。スタッフみんなで地域に自生しているものを摘んでみては『この食材試してみようか』と話し合ったり、料理のあしらいに使える植物を摘んだり、ということをしょっちゅうしていますね」(シェフ 糸井さん)
2023.01.21(土)
文=「文春オンライン」編集部