季節を感じる北欧の料理やお菓子

 日本ではあまり馴染みのない料理やスイーツなどから、北欧の国々の食文化に触れることができます。

◆新春には魚卵を

 フィンランドでこの時期に食べるものというと、ロシアから伝わったそば粉のパンケーキ、ブリヌイ。丸いパンケーキは太陽を象徴し、本場ロシアでは冬に別れを告げて春を迎えるお祭りでいただく味ですが、フィンランドでは1月に食べる習慣があります。ブリヌイと一緒に食べるのが魚の卵。刻みタマネギとサワークリームを添えてディルをトッピングするのが定番で、魚卵にクリーム!? と最初こそ驚きましたが、この組み合わせがとてもおいしい。イクラでもトビコでもOK。ブリヌイ作りが面倒だったら、茹でたじゃがいもにのせて食べてもおいしいですよ!

◆詩人が愛したお菓子

 2月5日はフィンランド国歌の詞でも知られる詩人、ルーネベリの誕生日。この日、フィンランドのベーカリーやカフェには、甘いもの好きのルーネベリのために妻フレデリカが作ったと伝えられるお菓子、ルーネベリタルトが並びます。タルトといってもパウンドケーキのような食感で、クリスマスに余ったジンジャークッキーを再利用して作るお菓子なのです。この愛らしいお菓子とともに節約家の妻として知られたフレデリカですが、彼女もまた優れた文筆家であったことが、近年の研究で伝えられています。東京・荻窪にあるフィンランドカフェ〈キエロティエ〉のルーネベリタルトはジンジャークッキーから手作りするという力作。本場にまけないおいしさです。

森 百合子(もりゆりこ)

北欧で取材を重ね、暮らしや旅の情報を中心に執筆。著書に『3日でまわる北欧』シリーズ(トゥーヴァージンズ)、『北欧ゆるとりっぷ』(主婦の友社)、『日本の住まいで楽しむ 北欧インテリアのベーシック』(パイ インターナショナル)ほか。執筆の傍ら、北欧のビンテージ食器とテキスタイルの店 Shop Sticka を運営し、NHK『世界はほしいモノにあふれてる』『趣味どきっ!』などメディア出演も多数。松屋銀座サイトで「森さんちに、おじゃましました」、カボニュー・コミュニティサイトで「スローに歩く、北欧の旅」を連載中。
https://hokuobook.com/
Instagram @allgodschillun

日本で楽しむ わたしの北欧365日

仕事や旅で約20年間、北欧を訪れていた森 百合子さんが北欧の食、暮らし、文化などを綴ったエッセイ集。1日1テーマずつ紹介されており、シーズンごとの行事、風習などを知ることができます。現地の情報だけでなく、日本での北欧スポットも網羅されているので、国内に居ながらにして北欧を感じられる一冊です。

定価 1,925円(税込)
パイ インターナショナル
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2023.05.02(火)
文=森 百合子
写真=森 百合子、森 正岳