ライフスタイルやデザインなどが魅力的なフィンランド、スウェーデン、デンマークなどの北欧の国々。それらの国に約20年間足を運んできたエッセイスト・森 百合子さんの書籍が『日本で楽しむ わたしの北欧365日』です。北欧の楽しみ方が1日1テーマ、365日分綴られており、現地情報だけでなく日本国内で北欧を体験できるスポットも知ることができます。
とくに北欧はまだ敷居が高い旅先ですが、いつか行く日のために読んでおきたい一冊。その中から旅や食文化についてのエッセイの一部を紹介します。
日本で出合える北欧スポットへ
東北のゲストハウスや東京のクラフトビール店など、日本国内で体験できる北欧スポットを本の中からピックアップしました。
◆南会津のダーラナ
スウェーデンのダーラナ地方は、スウェーデンの人にとって心の故郷のような場所。おみやげでもおなじみの木彫り馬、ダーラナホースが生まれた場所であり、伝統的な家の壁に塗るファールンレッドと呼ばれる塗材はダーラナの銅山が産地です。さて小さなダーラナが福島県の南会津にもあるのをご存じでしょうか。東北の伝統的な曲屋にカール・ラーションの絵で見るような古きよき時代の家具や装飾を合わせたゲストハウスで、スウェーデンで料理修行をしたオーナーシェフが営んでいます。冬は豪雪に見舞われ、夏は近隣でとれる野菜(トマトが美味!)をいただく自然に囲まれた環境もスウェーデンと通じる日本の小さなダーラナ。茅葺屋根の下にはスウェーデン国旗があり、大きなダーラナホースが歓迎してくれます。
◆和歌山のフィンランド
北欧の仕事を通じて日本の各地とも縁ができました。和歌山もそのひとつ。和歌山県立近代美術館内のカフェで開催されるフィンランドウィークスに招いていただいたことがありました。和歌山城をのぞむ会場にはデザイン雑貨をはじめ、地元のお店が作る北欧の味も並び、県外から訪れる方も多く熱気あふれるイベントでした。オフタイムにはみかん畑に面したカフェや地元書店に足を延ばしたりと、出店者のみなさんとの交流も楽しかった! イベントを主催するのは北欧雑貨や書籍を扱うショップ〈コルバプースティ〉。2022年には和歌浦に実店舗をオープンされたので、次回はぜひみかんの旬の時期にお店も訪れたいもの。それから和歌山名物のパンダも見に行きたい!
◆北欧ビールが飲みたくなったら
クラフトビールのおいしさを教えてくれたのは、デンマークの〈ミッケラー〉。そしてビールの奥深さ、おもしろさを日本で教えてくれるのが三軒茶屋のバー〈ピガール〉です。上陸前からミッケラーや北欧のクラフトビールを積極的に紹介していて、スウェーデンのクールな醸造所〈オムニポロ〉を知ったのも、ノルウェーの〈ラーヴィグ〉を知ったのもここ。この店で北欧の醸造家やビール業界の人々にも会えました。オーナー夫妻のヒデさん、チエさんと北欧のおいしい話をするのも楽しく、年に一度、研修として北欧をはじめ欧州のビアバーや醸造所をめぐる2人のビール愛と知識はクラフトビール界の宝。北欧ビールが恋しくなったら向かう場所です。
2023.05.02(火)
文=森 百合子
写真=森 百合子、森 正岳