今市隆二の原点は「幼少期の自分」と「中学時代のカラオケ研究」にあり?

 アーティストの今市隆二さんが、自身4枚目となるソロ・アルバム『GOOD OLD FUTURE』を11月2日にリリースする。ヴォーカルを務める三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBEのグループで放つ曲とはまた異なる楽曲の数々は、今市さんの繊細で艶やかな声を引き立たせるような美しさを見る印象だ。

 『GOOD OLD FUTURE』は、90年代のR&Bにフォーカスというテーマで製作されたと、今市さんは語る。そうしたアルバムに込めた思いから始まり、今の自分の原点となるような大切な思い出、そして胸に宿すファンへの率直な気持ちまで、心の赴くままに自身の言葉で紡いでくれた。

かけがえのない日常がつくる“古き良き未来”

――新アルバム『GOOD OLD FUTURE』がリリースされます。タイトルに込めた思い、製作の背景から教えていただけますか?

 はい。『GOOD OLD FUTURE』はR&Bのエッセンスがかなり強いアルバムになっています。もともと好きなジャンルがR&Bなので、今回のタイミングで、あらためて自分の好きなものに立ち返ってみようと思ったのが製作のきっかけです。タイトルの『GOOD OLD FUTURE』は造語なのですが、「古き良き未来」という意味を込めています。

 新しいものを生み出すときには、過去のものをリバイバルしないと生まれないと前から思っていました。90年代のR&Bにフォーカスを当てていますけど、そのままやっているのではなく、今のエッセンスも入れたりして新しく生み出すことを意識しています。過去のものに魅力を感じつつ、新しく未来を見定めようと。そのためには、過去に1回立ち返ることがすごく重要なのかなと思いました。

――「古き良き」を大事にしながら、今のムードも持ち込み、懐かしさもフレッシュに昇華させているという感覚が今市さんの楽曲ポイントかなと感じます。

 90年代のR&Bっぽさをただやるだけでは意味がないので、そうしたテイストを入れながらも、音色は今のものを使ったりしています。音色、リリック、メロデイトップライン……すごくいろいろなところで今と過去をミックスさせているんです。

――収録曲『Song For Mama』は今市さんによる単独作詞ですよね。お母さまに向けた曲ですか?

 自分の母もそうですし、全てのお母さんに向けても書いた曲です。ママへの曲は、R&Bではわりとある手法なんですね。自分は今36歳で、まわりも結婚していたり子供がいたりするので、年々母親の偉大さを感じていました。前から書きたいテーマだったので、今回タイミングが重なって作れることになりました。

――どんな風に書き進めていったんですか?

 自分の記憶だけでなく、実際の記録からもインスピレーションを得たいなと思ったので、実家のホームビデオを見ようかなと。母に「ある?」と連絡したら、「壊れた」と言われて(笑)。DVDにできることがわかったので、テープを十何枚のDVDにしてもらいました。全部見て、いろいろインスピレーションを沸かせて書きましたね。

――膨大なDVDの中には、どんな今市さんが映っていたんですか? 気になります。

 幼稚園に入る前と幼稚園の頃の映像でした。俺、びっくりするぐらいずー-っとふざけていました(笑)。人の話も聞かないでずっとボケてるし、基本、なんか脱ぎたがるし(笑)。

 発見が多かったので本当に見てよかったです。記憶の中では、親父はそんなに世話をしていたタイプではないと思っていたんですけど、映像だとめちゃくちゃパパをやってくれていたんですよ。あと、俺は兄貴のことをめっちゃ好きだったんだなとか、映像で見てすごくわかって。いわゆる……すごくエモかった(笑)。

――思いを馳せながら、浸りながら仕上げられたということですね。

 書きたかったことが書けました。あと、『Song For Mama』の曲が終わった後にスキットという、インタールード的なのが入っているんです。DVDから抽出して録音した自分の子供のときの声を入れたりもしました。そういうところでの面白さも感じていただきたいですね。

2022.11.02(水)
文=赤山恭子
撮影=榎本麻美