「ソファに座って木漏れ日を受けている時間」に平和を感じる

――1曲1曲に思いが詰まっていて、丁寧に作り上げた楽曲が積み重なった1枚のアルバムという感じなんですね。

 そうですね。例えば、エンディング曲『Star Seeker』は、かけがえのない日常をテーマにしました。それぞれ自分にとっての大切な人……異性でも、友達でも、家族でもいいんです。身近な人とすごす日常こそが特別、という曲で。日常と聞くとあまり特別なものと感じにくいけど、「それこそが素晴らしいんだよ」というその気持ちを曲に込めました。

――今市さんにとってのかけがえのない日常とは、どんな1日なんですか?

 そうだなあ……休みの日に家のリビングのソファに座っていて、めっちゃ天気も良くて、窓から木が見えたりして……そういうときに「平和だな」と思うんです。そういう気持ちには若いときには気づけなかったけど、歳を重ねるうちに感じるようになりました。

――ソファから木々を眺めて平和だと感じる映像が、当たり前だけど特別な日常として今市さんの中で浮かぶんですね。

 そうですね。光の加減とか、木漏れ日というか、葉が動いて光もきれいに動いて……。たしか、そのリビングでの時間で『Star Seeker』を「かけがえのない日常」というテーマで書きたいと、そう思ったんです。

――歌詞は、そうしたふとした日常の思いから掬い取っていることが多いですか?

 そうかもしれないですね。あとは、本当にシンプルですけど、自分が感動したことを形にしようとしています。音楽はいろいろな要素が絡み合ってできているけど、自分が感動したことを届けるのが一番の表現者じゃないのかな、と思っているんです。

 『Song For Mama』で言うと、歌詞を書きながら結構(心に)きていて、レコーディングしながら最後のフレーズを歌うときも、かなりギリギリだったんです。ちょっと「ウッ」と心にきて歌えない……みたいな。結局その一発で録ったものが使われているんですけど、それでいいと思っていて。

――音楽も映画も、もしかして同じかもしれないですね。すごく派手なブロックバスター映画も楽しいけれども、何でもない日常を描いた作品が妙に感動したり沁みたりしますので。

 そうそう、それがとても重要なんですよね。音楽でいうと、トレンドだったり、「このビートで」、「この音色で」とかももちろん大事なんですけれど、それはそれ、というか……「かっこいい、いけてるね」で終わるんじゃなく、自分が感じたことや感動したことを形にしたほうが、絶対に残るし伝わる作品が作れるんじゃないかと思ってやっています。

2022.11.02(水)
文=赤山恭子
撮影=榎本麻美