取材の日、小林直己さんの表情はとても晴れやかだった。

 2020年10月から開始した連載に加筆をした、初の著書『選択と奇跡 あの日、僕の名字はEXILEになった』発売当日のインタビュー。小林さんは、「空き時間に、SNSで感想を見ちゃったりします」とソワソワする気持ちを抑えられないと、ときに少年のようなまなざしで微笑む。

 EXILE、三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBEのパフォーマーとして、11年駆け抜けてきた小林さん。

 ダイナミックなダンスと恵まれた体軀もあいまって、屈強なイメージが先行していた彼だが、ここ数年で変化が訪れていた。

 こわばっていた心がほどけていったような、軽やかな自分との出会い。

 著書では、そうした気持ちの移り変わりや、これまでヴェールに包まれていた部分が、小林さんならではの言葉で綴られている。

 活躍の裏で抱えていた思いを、執筆の際のエピソードとともに小林さんに聞いた。

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「さすがに明日の朝までにはもらえますか?」と言われ……

――発売日を迎え、『選択と奇跡 あの日、僕の名字はEXILEになった』がファンの皆さんの手に渡りました。今どのようなお気持ちですか?

 すごく嬉しいです。先ほど書店を見てきたんですけど、僕の両腕を広げても届かないぐらいの広いスペースに、本と(三代目JSBの)アルバムが並んでいたんです。自分の書籍を出すなんて10年前にはまったく想像できなかったですし、本を持ちながら記者会見もして……、すごく不思議な感じがありました。

 本には、今まであまりオープンにしてきていなかった部分もたくさん書きました。校了の最後の日まで、今の自分の思いが届くように何度も書き直したので、受け取ってくださった方がたくさんいらっしゃることが、すごく嬉しいです。今もちょっとSNSで、手に取ってくださった方の感想を見たりして、それも嬉しくって。がんばってよかったなと思います。

――もともと「文藝春秋digital」にて連載された『EXILEになれなくて』がベースになっている著書ですが、連載当時からこれまで筆は順調でしたか?

 いえ、そんなことはなかったですね。結局300ページを超えたので、全部で20万字くらいかな……? それくらい書いたんですよ。本を読んだり、文字を書くこと自体はすごく好きで、自分の中で考えを整理するときにはノートにバーッと書き出したりもしました。けど、いざ書くとなると、本当に大変でした(苦笑)。

――どういう環境で書いていたんですか? ご自宅の書斎、とかでしょうか。

 書斎とも呼べないんですけど、パソコンをいつも開くテーブルがあるので、そこに座って書いたりですね。でも、自分は「毎日10時から2時間座って書くぞ!」という風にはできないタイプでした。なので、自宅だけでなく、ツアー先でホテルに帰ってからとか、移動中にも書いたりしていましたね。

――「締め切りに追われて、どうしよう!」という経験も?

 あります、あります! 連載中は締め切りがどんどんくるんですよね。状況も日々変わっていったので、書こうとしていた内容から変わって、書き直さないといけないときもありました。「もう締め切りを過ぎていますけど……。さすがに明日の朝までにはもらえますか?」と言われたときもありましたしね(笑)。編集の方々にご迷惑をおかけしましたし、たくさん助けていただきました。

 こうやって振り返ると、日々何となく連載のことをずーっと考えていたんだなあ、と思いますね。

2021.12.11(土)
文=赤山恭子
撮影=杉山拓也