『トップガン マーヴェリック』が面白かった

――以前、木村さんが「映画を観ると感情をもらいすぎる」とお話しされていたのが印象的でした。

 映画の影響を受けすぎるというよりは、映画という娯楽が仕事に侵食されすぎてしまうという意味です。

 自分以外の人は理解できないから「どうしてこの人はこういうタイミングでこういうセリフを言うんだろう?」と劇中の役に対して思うこともあるし、「私だったらこういうシーンでこう思うけど、この役者さんはどうしてこういう風にしたんだろう?」とか、そういった風に考えだしちゃうと止まらなくなってしまうんです。

 だから、自分が作品に入っているときはあまり映画を観られません。

――なるほど、そういった意味でしたか。先ほどの「仕事だから『好き』に入らない」というお話にも通じますね。

 『LOVE LIFE』の撮影が終わって4月くらいからゆっくりさせてもらっていたのですが、最近ようやく映像を普通に面白いと思えるようになりました。100人中90人くらいが言いそうですが(笑)、『トップガン マーヴェリック』が面白かったです。

 私は土曜日に観に行ったのですが、それまでは自分が選ぶ映画って大体同世代の人が集まっているイメージだったのに、自分の親世代と私たちよりも若い世代が半々くらいで、かつほぼ満席状態でした。

 私は何の前情報もなく映画館に行ったので「なんでこういうお客さんの入り方をするんだろう? (作品がターゲットとして)狙ってる層はどこなんだろう?」と思いながら映画を観たのですが、「子育てなり仕事なり、人生がひと段落してもう一回自分たちの人生を始める」姿が描かれていて、「そうか、自分の親世代の人たちにドンピシャな映画なんだ!」と合点がいきました。

 親と一緒に観に行ける映画ってなかなかないですし、しかも終わった後に作品に対しての意見だけじゃなく「自分のときはこうだった」「結局いくつになっても好いた惚れたって変わんないね」と話せるのって、すごく素敵だなと感じました。

2022.09.09(金)
文=SYO
撮影=石川啓次
ヘアメイク=井村曜子
スタイリスト=申谷弘美