年長者として意識している「転ばぬ先の杖」の“危うさ”

――はい(笑)。そういえば、先日ある企業が新入社員に行った「理想の上司」アンケートでは、天海さんが明石家さんまさんと同率で1位、特に女性からの支持が多かったそうです。

 なんてこと、さんまさんと並んで! それは大変光栄なのですが、私は上司になったことがないので何だか申し訳ないという気持ちがあります。

 だけど、そうやって私に重ねていただけたということはとてもありがたいことで嬉しいですし、そういう役を私に振ってくださった皆さんに感謝ですね。

――今回は石田ニコルさんや神尾楓珠さん、西垣匠さんなどフレッシュなメンバーも加わり「世代交代」が作品のテーマの一つだそうですね。年下の方と共演する際にアドバイスをすることはありますか?

 アドバイスって難しいですよ。助言ひとつするにしても、この人に今どんな言葉をかけてあげたらいいのか、今これを言って受け止められる心の準備ができているんだろうかといった、その人の今の状況を見なければいけない。でも、その人にとって“欲しい答え”が明確にある場合もある……そういう時には向こうから相談してくるのを待ってあげることも、アドバイスを言う立場には必要だと思っているんです。

――今のお話だけでも「天海さんに悩みを聞いてもらいたい!」と思った読者は多いのでは……?

 そうですか(笑)。例えば親が子供に自分と同じ失敗をさせないために「これはこういうことがあるから気をつけなよ」って転ばぬ先の杖を言ってしまうことがあるでしょ?

 それと同じことが先輩後輩の関係でも起きると思うの。でも、その子がアドバイスの内容を受け止められる状態じゃなかったり、もしくはもう解決している段階だったりすることもあるから、経験豊富だからといって人生の先輩たちが後輩に先に先に助言してしまうと彼らは受け止めきれなくなってしまうと思うんですよ。

 時が来たらきっと必要な質問をしてくるだろうから、その時に教えてあげればいいのかなって。

 とはいえ自分から聞かないと先輩から教えてくれないことの方が多いから、さっき神尾くんと少しお話ししたときにも「この人の話が聞きたいと思ったら自分からぶつかっていかないと!」と言いました(笑)。

2022.09.15(木)
文=根津香菜子
撮影=鈴木七絵
ヘアメイク=林 智子
スタイリスト=えなみ眞理子