この記事の連載

シーズン限定「ピーチメルバ」は桃のやさしい甘さがご馳走

 味の組み合わせや構成はフランス菓子やデザートから発想することも多いとか。「ピーチメルバ」は、バニラアイスクリームに桃のシロップ煮をのせ、ラズベリーソースをかけた伝統のデザートをかき氷で表現しています。

 フレッシュな桃とコンポートにした桃、カスタード風味のエスプーマ(泡状のムース)、桃のコンポートのシロップ、桃のソース、ラズベリーソースなどが氷とともに重なり合い、甘酸っぱいクラッシュした冷凍ラズベリーと、香ばしくカリカリしたアーモンドのヌガティーヌがアクセント。

 上にはふんわりケーキクラムもかけられていて、やさしい表情を浮かべます。口に運べば桃のみずみずしさと力強い果実感、カスタードのまろやかさが混じり合い、広がるのはかき氷を超えた贅沢感。食べ応えもたっぷりです。

ときには炎の演出も。瞬間の美味をつかまえて

 「一番に考えるのは、レストラン出身のパティシエがつくるかき氷だということです。素材も一般には出回らず、レストランだからこそ使えるようなものを使ったり、傷があったり見た目が良くないフルーツを農家さんから直送してもらって、それをパティシエならではの技術でソースやコンポートに加工したり。フキノトウや黒トリュフ、アマゾンカカオ(自らも料理人の太田哲雄さんが扱うペルー産カカオ)なども使います。

 『苺とシブースト』や『沖縄パッションフルーツとシブースト』のように、お客様に楽しんでいただけるよう、目の前でかき氷の上に絞ったクリームを焼き上げることもあります」と、堀尾さん。

未知の体験。ポテトチーズの甘じょっぱいかき氷も登場! 

 なかには、ほんのり塩気のあるインカのめざめ(ジャガイモ)のピュレと、練乳、カマンベールチーズのエスプーマ、ひよこ豆のサラダを組み合わせた「インカのめざめ」のような、料理的発想による驚きの組み合わせも! ほの甘いヴィシソワーズを思わせる味わいが目からウロコのおいしさで、上には、発想の原点になったという揚げたてのポテトチップスが。パリパリした食感と塩気が心地よいアクセントとなり、後を引きます。

 「目指しているのは、ほかでは食べられない、ちょっと手のこんだかき氷です。パティシエは生地やクリームでケーキをつくりますが、かき氷は生地が氷になったようなものだと思うんです。その生地に粉や卵に邪魔されることなく自由自在に味がつけられるのがすごくおもしろいところ。可能性は無限大です。でも、冷たいから味や香りが伝わりにくくて、実はめちゃくちゃ難しい! やればやるほど奥深いです」と、堀尾さんは話します。

 そのうえで最後まで食べ飽きることがないよう、3層を基本にかき氷を組み立て、シロップやソース、エスプーマ、メレンゲ、ガナッシュなどを重ねて多彩な味わいと食感に仕立てるのが、堀尾さんの真骨頂。これまでの概念の一歩先行くかき氷には、新たな発見と驚きが満ちています。

スペシャルなその他のメニューにも注目

 「あずきとこおり」は通年のかき氷専門店ですが、かき氷以外のメニューもないわけではありません。

 堀尾さんが丁寧に炊き上げたあずきを使ったフレンチトーストは、あずきの味に合わせて焼いてもらうというブリオッシュで。世界的に活躍する「フロリレージュ」川手寛康シェフが作る季節のスープも味わえます。

 今後は台湾をはじめ海外への進出も見据え、「日本の文化としてかき氷を世界中に知ってもらいたい」と話す堀尾さん。挑戦はまだまだ続きます。

あずきとこおり

所在地 東京都渋谷区代々木1-46-2 グランデュオ代々木 1F 
電話番号 なし
営業時間 11:00~18:00
定休日 水曜
※予約優先(7日前の21:00から受付)。キャッシュレス決済のみ
https://azukitokouri.com/

次の話を読む東京でかき氷の最高峰に出合う 「アンフィニ」のパティスリー氷 計算し尽くされた構成に感動!

2022.08.11(木)
文・撮影=瀬戸理恵子