鈴木 油屋がある?

ジョン 『風の谷のナウシカ』や『もののけ姫』では、主人公がいろんな場所をあちこち動き回るので舞台でやるのは難しい。『千と千尋』の場合、基本的には油屋で物事が起きる。つまり、油屋それ自体が能の舞台や相撲の土俵のように、日本的な劇場空間になっているんです。

鈴木 なるほど。

ジョン その油屋を舞台に八百万の神が集い魅力的なキャラクターたちが入れ替わり立ち替わりで登場する。湯婆婆から下働きの湯女やカエル男まで明確なヒエラルキー(階級)があるのも面白いです。

「可愛すぎて食べちゃいたい」

鈴木 演出家らしい視点ですね。僕はね、宮さんならではのスケールの大きい作品を演出できる人って日本にはいないのかもしれないと思っていたんです。

夏木 そうだと思いますよ。オリンピックを見ればねえ……ジョンに開会式も演出してもらえば良かったのに。

ジョン たった1回の演出のために何年間も働かなきゃいけないなんて、私はやりたくない(笑)。ちょうどオリンピック期間に来日して、隔離期間の間に観ていましたが、パラリンピックのセレモニーは面白かったです。

夏木 ホントそうでした。

鈴木 製作発表で主演の千尋役のお二人に会って驚きました。千尋は、僕たちが家族ぐるみで親しくしている、映画プロデューサーの奥田誠治さんの娘さんがモデルなんです。上白石萌音さんは、千尋のモデルである娘さんによく似ていて、橋本環奈さんは、そのお母さんに雰囲気がそっくりなんです。

ジョン 萌音さんとは『ナイツ・テイル―騎士物語―』という作品でご一緒しましたが、本当に素晴らしい役者さんです。根っからの善良さ、素朴さがそなわっていて、それが演技ににじみでてくる。彼女なら、すぐに千尋になっていくと思います。

 環奈さんも才能あふれる、とてもエネルギッシュな役者さんですね。

夏木 二人とも可愛くていじめがいがあります。もう可愛すぎるから食べちゃいたいですもん。

2022.04.03(日)
文=「文藝春秋」編集部