サウンドトラックも作りたいしやりたいことがたくさん!

――今回の「One Reason」もそうですが、miletさんの楽曲は映像が鮮明に浮かぶものが多いです。映画もお好きだそうですが、特に影響を受けた作品というと?

 不動の一位は『タクシードライバー』です。バーナード・ハーマンの手がけたスコアがとても良いですし、主演のロバート・デ・ニーロの目線も含めてすべての動きに夢中になって、何かあるとすぐ観ちゃうので、もう100回以上は観ていると思います! プロットも持っています。あの映画を観てから、「自分も強くありたい」と思うようになりました。

 『タクシードライバー』もそうですが、音楽がなくても観ていたくなる映画は、映像作品として優れていると思っているんです。音楽が加わることによってストーリーの本質が見えてくる。そこに音楽の可能性をすごく感じています。だからこそ、映像作品の主題歌を作るのはすごく難しいことだと思っています。ストーリーの本質を導き出すためには、自分自身の作品を読み解く力や経験が試される。深掘りすればするほど、映画と音楽の新しい関わりが見えてきたりもするので、すごく快感を覚えますね。

――映画全編の音楽を一アーティストが手掛けることもありますが、いずれはそういったこともやってみたいと思いますか?

 くるりさんもそうですよね。サウンドトラックはいつか作ってみたいです。

 映画音楽が作りたくて、映画を勉強していましたし、歌のない曲も作ってみたいですね。やりたいことは無限にあります。映像作品には本当に多くの方が携わっていて、尋常じゃないパッションが注がれているので、今回は主題歌としてその一部になれて夢のような仕事だなって思っています。

――最後にプライベートのことも訊かせてください。インドア派ですか? アウトドア派ですか?

 こう見えて結構アウトドア派なんです! 休みは出かけるほうが好きです。散歩することも多いですが、たまに大きな公園に行ったり、海に行ったり。海には入らず、景色を見ているのが好きなので、夜の海に行くこともあります。

――食べることもお好きだそうですが、気を付けていることはありますか?

 エネルギーになるのでタンパク質をたくさん摂るようにしています。玄米に切り替えたり。あとサラダが好きなので、野菜スティックはよく食べていますね。

――miletさんはお会いする度にポジティブなエネルギーを放たれているのが印象的なのですが、何か秘訣はあるのでしょうか?

 やっぱり体と心はすごくコネクトしているので、体が健康じゃないと心も健康でいられないですよね。もちろん落ち込むこともあるんですけど、翌日に持ち込みたくないので、何かあると無理やりにでも寝てリセットするっていうことを心がけています。人生にはいろんなことが起こるし、理不尽なことも尽きないけど、引きずらないで忘れることを大切にしています。

 元々は妹に教わったんですよね。妹が家にゴキブリが出たときパニックになっちゃって、そのゴキブリのことが忘れられないって人に話したら、「忘れろ!」って言われたらしくて。その話を聞いたときから私たち家族の中で「忘れろ!」っていうキーワードが流行り始めたんです(笑)。それまで私はいろんなことを引きずるタイプだったんですが、今はやりたいこともたくさんあるし、どんどん切り替えて前に進んでいかなければならないと思っています。

milet(ミレイ)

東京都出身。思春期をカナダで過ごし、グローバルな存在感を放つソングライティングとハスキーかつ重厚感のある独特の歌声を兼ね備えたシンガーソングライター。2019年3月6日にメジャーデビュー。Toru(ONE OK ROCK)プロデュースによるデビュー曲「inside you」は人気音楽配信サイト11サイトで1位を記録。2020年には1stフルアルバム『eyes』をリリースし、オリコン週間CDアルバムランキング及びオリコン週間デジタルアルバムランキングにて共に初登場1位を記録。2021年は「東京2020オリンピック」閉会式に歌唱出演し、年末には2年連続となる「NHK紅白歌合戦」に出場。2022年2月2日(水)リリースの最新アルバム『visions』も好評発売中。

映画『鹿の王 ユナと約束の旅』

それでも、生きていく―
飛鹿(ピュイカ)に跨り戦った最強の戦士団<独角(どっかく)>。
その最後の頭であったヴァンは、強大な帝国・東乎瑠(ツオル)を相手に戦ったが敗れ、
奴隷となり岩塩鉱に囚われていた。
ある夜、ひと群れの不思議な山犬たちが岩塩鉱を襲い、死に至る謎の病<黒狼熱(ミッツァル)>が発生する。
山犬に噛まれながらも生き残ったヴァンは、一人の幼い少女ユナを拾う。
伝染する死に至る病――。
東乎瑠(ツオル)の民だけが病にかかると噂が広がる王幡領では、
天才医師ホッサルが、懸命にその治療法を探していた。
孤高の戦士と抗体を求める天才医師、出会うはずのなかった二人は旅に出る。
誰のために生きるのか。何のために生きるのか―。
しかし、世界に広がる謎の病の背後には、想像を絶する思惑と、過酷で雄大な自然、そして巨大な陰謀が渦巻いて
いた――。
世界を侵食する謎の病。
抗体を持つのは、孤独な戦士と一人の少女だけ。

出演:堤 真一 竹内涼真 杏 ほか
原作:上橋菜穂子『鹿の王』(角川文庫・角川つばさ文庫 KADOKAWA 刊)
監督:安藤雅司 宮地昌幸
脚本:岸本 卓
キャラクターデザイン・作画監督:安藤雅司
主題歌:「One Reason」milet(ソニー・ミュージックレーベルズ)
アニメーション制作: Production I.G
https://shikanoou-movie.jp/
全国映画館にて公開中。

2022.02.05(土)
文=小松香里
写真=平松市聖