菅波先生とモネの関係が、ついに恋愛に進展!

 そしてここ最近一番ホットな案件は、菅波先生とモネの恋! ここまで見守ってきてなんですが、この2人の関係、できれば安易に恋愛に回収されてほしくなったという思いも実は少しあります。男女の友情は成立するのか、という安っぽい命題がほしかったわけではないのですが、性別関係なく築かれる師弟関係みたいなものを2人は見せてくれるのではないか、とも思っていたのです。

 それぐらい、登米編で菅波先生がモネに気象のことを教えるシーンは「学び」の喜びを伝える素晴らしい場面だったのです。

 未知なる文化や学問・価値観に触れる学びは、何歳になっても必要な経験です。学びに出会った時に、人はいつでも、水が「Water」という名前なのだと知ったヘレン・ケラーのような驚きと感動を素直に覚えるもの。

 菅波先生とモネが一生懸命に勉強に取り組む様子をみて、この2人はサリバン先生とヘレン・ケラーのような特別な関係になり得る! と期待していたのですが、まぁ普通に考えてそれは恋愛フラグですよね……。教える/教えられるという関係により、まだまだ未熟で不器用な2人それぞれが人間として自然に成長してしまう姿が素敵だったのですが、東京編での恋愛の盛り上がりに合わせ、恋模様ばかりに注目が集まってしまった。まぁ、恋も人を成長させますしね。Twitterで #俺たちの菅波 がトレンド入りする気持ちもわかります。

 坂口健太郎といえば朝ドラ「とと姉ちゃん」で、ヒロイン・常子(高畑充希)の相手役を演じていたこともありました。丸眼鏡に学生服の真面目な姿が印象的で、植物学者を目指す優しい帝大生・星野という役でしたが、菅波先生もどこか星野に通じるところがある気がします。

 “葉っぱのあんちゃん”と呼ばれるほど、植物が大好きな星野。恋愛下手で、互いに鈍感な常子ととんちんかんな展開になることも多々あったので、そこは菅波先生とモネにも共通しています。

 ただ、「とと姉ちゃん」では星野は大阪で研究職として呼ばれたことを機に、ヒロインの常子にプロポーズしたところ悲劇の結末に。常子は東京で家族を支えることを選び、星野は一人大阪に旅立ってくという悲恋で終わりました。今回、東京を離れ登米で在宅医療を行う菅波先生と、東京で働くモネとが恋愛関係で結ばれるというのは、朝ドラフリークとしては嬉しい部分も大きいです。

 菅波先生とモネとの年齢、7~8歳差というのが判明したけれど、そもそも恋愛において年齢差を気にするのはナンセンス。登場人物の誰もがその心配をする素振りを表したり、咎めるような言い方をしなかったところもいいですよね。理解と信頼があれば、距離も年齢差も、恋愛を止める障害ではありません。想像力を重視する姿勢、対話する姿勢は今作のテーマのひとつですが、菅波先生がモネに伝えた「あなたの痛みは僕にはわかりません。でもわかりたいと思っています」というセリフで、このテーマがしっかり恋愛にも活かされているなと感じます。じれったい2人を、登米の人たちと同じようにわきゃわきゃしながら温かく応援していきましょう。

NHK連続テレビ小説「おかえりモネ」

総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00〜11:15
土曜は1週間を振り返り
出演:清原果耶、内野聖陽、鈴木京香、蒔田彩珠、藤竜也、竹下景子、夏木マリ、坂口健太郎、浜野謙太、でんでん、西島秀俊、永瀬廉、恒松祐里、前田航基、高田彪我、浅野忠信ほか

綿貫大介

編集&ライター。TVウォッチャー。著書に『ボクたちのドラマシリーズ』がある。
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2021.09.17(金)
文=綿貫大介