朝ドラ「おかえりモネ」東京編も佳境に入り、盛り上がりは最高潮。ドラマ内では平成も終わり、新たな時代に突入しています。

 みんながどう成長していくのか、最後まで楽しみなのですが、ここで改めて東京編の注目トピックをおさらい。毎回ぐっときてしまう、朝ドラにおける上京についても考えます。


上京はヒロインの成長に欠かせないイベント

 ヒロインの上京、それは朝ドラにとって一大イベントのひとつです。ヒロインが自分で決意し、それを家族に告げるシーンや、実際に親元を離れて次の舞台へと旅立つシーンは毎回うるっときてしまいます。これはもう、通過儀礼。別れと新たな出会いという人生の縮図を表現でき、夢への道のりとなる「上京」シーンは朝ドラに欠かせません。それはヒロインにとってだけでなく、親たちにとっても同様に大切なイベントなのです。

 「なつぞら」では、ヒロインの奥原なつ(広瀬すず)に対して、じいちゃん役の泰樹(草刈正雄)が「東京で幸せになるなら、それも立派な親孝行じゃ」というセリフを放ちます。

 今作ではヒロインの父親・耕治(内田聖陽)が「娘が、東京で、自由に、楽しそうに仕事してんの本当に嬉しいんです」「どうなるかわからない世の中、どこに行ったって構わない。ただ、お前たちの未来は明るいんだって。決して悪くなる一方じゃないって、俺は信じてえ」と気持ちを吐露します。

 家族にとっても、ヒロインたちが自らの意志で進んでいく、東京という場所は特別。もちろん東京じゃなくてもいいけど、都会に出るという行動が、新たな価値観を身につけるという点で朝ドラヒロインにとって重要な気がします。都会なんて、夢ばかりですから。

 それにしても、今作のヒロイン、永浦百音(清原果耶)ことモネの無鉄砲な上京ぶりはすごいです。気象予報士試験には合格したものの、東京での勤務先などは一切決まってない状態で務めていた森林組合を退職。そのまま上京……って、嘘でしょ? と、思いました。東京はそんなに甘くないよ! と思いつつも、もちろんちゃんとうまい具合に就職できます。

 主人公の人間関係がガラっと変わるというのも、「上京」物語のよさのひとつ。都会には夢があるなんてのはあくまでも建前で、結局、大切なのは場所ではなくて人なのだ、という気づきがちゃんとあるのが朝ドラです。東京編では気象キャスター・朝岡覚(西島秀俊)、神野マリアンナ莉子(今田美桜)、内田衛(清水尋也)、野坂碧(森田望智)が同じ会社の同僚です(気象予報はチーム戦!)。

 ほかにもモネが担当する番組の気象班デスク・高村沙都子(高岡早紀)、モネが住むシェアハウスの大家・井上菜津(マイコ)、モネが仕事で関わる車いすマラソン選手・鮫島祐希(菅原小春)などが登場しました。

 モネの同級生・スーちゃんこと野村明日美(恒村祐里)や、医師の菅波光太朗(坂口健太郎)など、おなじみキャストが東京にいるのも心強いです。

2021.09.17(金)
文=綿貫大介