「籾井を育てないと、日本女子バレーに未来はない」
世界チャンピオンの中国にはストレートで負けたものの、籾井はへこむどころかきりりとした面持ちで前を見た。
「緊張は全くしなかった。実際に中国とやってみて学ぶことがたくさんありましたし」
五輪デビューのケニア戦で勝利を飾った
五輪の前哨戦と言われ、5月下旬から1か月間、イタリアで行われたネーションズリーグに、籾井は17戦中15試合に出場。新人離れした度胸のある巧みなトスワークで、中国、イタリア、ロシアなど強豪を破り、日本をベスト4に導いた。エースの古賀紗理那がいう。
「他のセッターにはない組み立てで、自分がパスした後でも速いトスが上がってくる。さぼってられないんです」
コミュニケーション能力も高く、先輩にも物おじしない。ネーションズリーグで格上のブラジルに負けたとき「戦う以前に自分たちの勝つという気持ちをあまり出せていなかった」と発言。これには中田も苦笑いするしかなかった。
「でも、この発言に眉を顰める選手は一人もいなかった。むしろ『そうだよね』と気合を入れ直した。籾井の魅力は強気な性格はもちろんですが、ハンドリングの上手さには目を見張るものがある。トスの間を手首や指先で微妙に調整し、アタッカーに打ちやすいトスを挙げられる。あのセンスは天性だと思うし、攻撃のバリエーションも多い。もちろん新人だから荒いところもあるし、時々ポカもやるけど、経験を積めば今後伝説のチームを作る可能性だってある」
籾井は7月25日、初戦のケニア戦でデビューを飾り、少し固さは見えたものの3-0で勝利。だが、チームの中心選手である古賀が3セット目に怪我で退場するとチームに動揺が走った。籾井のトスワークがチームをどう立て直すのか、次戦に注目したい。
2021.08.04(水)
文=吉井妙子