「不安を抱えながらやっていました(笑)」
――演じる上で、『ヒロアカ』だからこそ心がけていたことも、あったんでしょうか?
吉沢 バトルものの世界観というか、攻撃を受けているときのリアクションとかは、普段演技をしていてもなかなか経験できるものじゃないので、特に丁寧にやろうと心がけていました。自分としてはバリエーションが少ないなと、まあまあ落ち込みながらやっていて(笑)。やっぱり難しかったです。
――観ていてまったく違和感がありませんでしたが、苦心されていたんですね。
吉沢 「うわーっ!」、「うぉっ」とかのバリエーションが、少なかったりするんです。ちょっとしたアクションの息遣いも、すごく難しいから、全部同じ声になっちゃう気がして。
デク役の山下(大輝)さんと、ふたりでずっとアフレコをさせてもらったんですけど、山下さんの声を聴いていると、「やっぱりデクはすごい!」とまざまざと思い知らされました。山下さん、ずーっと叫んでいるのに、まったく声が変わらず同じトーンでいけるんです! 純粋に感動しました。レベルが違うと、改めて思ったんです。
――そういうとき、山下さんからアドバイスをいただくこともあったんですか?
吉沢 「(こんな感じで)大丈夫ですか?」と何回か聞いたんですけど、「大丈夫です、大丈夫です。好きなようにやってください」と言ってくださって。「本当に大丈夫かな⁉」と不安を抱えながらやっていました(笑)。
――とはいえ、今回チャレンジしたことで、手ごたえを感じたり、新たな発見などもありましたか?
吉沢 声のお仕事では、普段のお芝居では出さないような声をいっぱい出しながらやっていたので、それこそ「俺、こんな声出るんだ!」という発見はありました。「意外と三枚目の声出るな!」って(笑)。
ロディは三枚目と二枚目のあいだの、2.5枚目のキャラクターだと思うんです。そんなロディが攻撃されているときの声、わめき散らしているときの声、情けない感じの声をやっていると、「意外と三枚目をやれるのかな⁉」と思えたので、ちょっとうれしかったです。もともとアニメはすごく好きですし、声優の世界への憧れはずっとあったので、自分の中にふわっと引き出しみたいなものを感じられました。
――逆に格好いい二枚目路線の声は、お手の物?
吉沢 格好いい声か。なんか技名とかあればね、かっこつけてやれたんですけど、今回はそういうキャラじゃなかったんで(笑)。
――映画のなかでロディがデクに「行くんだ、ヒーロー!」と叫ぶシーンがありますが、あのあたりは、ちょっとグッとくる台詞な気がします。
吉沢 「行くんだ、ヒーロー!」は、すごく叫びました! 普通の芝居では出ないくらいの声で叫びましたから、やっぱり楽しかったです。声だけで表現する時って、自分自身の表情とかポーズは意識しなくてもいいじゃないですか。(全身を強張らせながら)「うわぁー!」って叫ぶ声だけに集中するのは、普通の芝居じゃできないことだから気持ちいいなと思いながらやっていました。制限せずできたのが、楽しかったです。
2021.08.07(土)
文=赤山恭子
撮影=鈴木七絵
ヘアメイク=内山多加子(Commune)
スタイリング=荒木大輔