◆天ぷら 成(masa)[札幌]
クラウドファンディングで大人気
「蝦夷前天ぷら」という呼び方を聞いたことがあるだろうか。発音は似ているけれど、「江戸前」ではなく「蝦夷前」。北海道の食材を使った天ぷらだ。コロナ禍の2021年4月1日に札幌すすきのにオープンした「天ぷら 成(masa)」では、北海道を感じる天ぷらをいただくことができるという。さっそく伺った。
店主の村井成至(まさゆき)さんは、札幌で60年続く和食料理店「浪花亭」の3代目。京都の老舗料亭「菊乃井」で7年の修業、東京・銀座の「天ぷら 近藤」で2年半の研修を経て、故郷の札幌に帰って来た。目指したのは、“料理屋ならではの、概念にとらわれない天ぷら屋”。
店を構えたのは祖父が創業した「浪花亭」内。店の外に大きく掲げられている楽しそうな笑顔の写真は、創業当初の祖父母だ。入口を入ると右手に、父の村井隆さんが営業を続ける「浪花亭」のカウンター、左手の暖簾をくぐると別店舗の「天ぷら 成(masa)」がある。旭川のナラを使った真新しいカウンターが美しい。
店舗をオープンするにあたっては、クラウドファンディングも活用した。改装資金も必要だったが、「全国の皆さんに知ってほしかった」という。リターンは主に食事やイベントなどの利用権。目標額の550万円を超えて約590万円を達成するという人気ぶりだった。
飲み物を選んだらまずは先付けから。まずは北海道ならではの子持ちイカの煮付け。そして、大間のマグロと同じ漁場から水揚げされる噴火湾の天然マグロを和辛子で。3品目は、サクラマスの漬け。木製の器が北海道らしさを醸してくれる。ここまででかなり期待が高まった。
2021.06.19(土)
文・撮影=たかせ藍沙