みんなで面倒を見ているうちに……
「こんにちは。突然すみません」とドアを開けて趣旨を説明する間もなく、目の前に看板ネコの姿が。
いた。あっさりみつけた。
店主の藤井泉さんが、お客さんを調髪しながらタマ(推定5歳/メス)の出自を語ってくれた。
「タマはもともと駅前の中華料理屋でエサをもらっていたんだけど、猛暑のある日、あまりの暑さに店主がよかれと思ってタマに水をかけてあげたら、びっくりして逃げ出して、幹線道路を渡ってうちのほうまで来ちゃったんだよ。
おでん屋さんでおでんをもらい、ラーメン屋さんでチャーシューをもらい、うちは牛乳をあげて、みんなで面倒を見ているうちに、お店の中に居つくようになって、そのまま飼うことにしたというわけ」
興味深く話を聞いていると、タマが店を出てパトロールに行ってしまった。
藤井さんに調髪に戻っていただき、すかさずタマを追うッ!
お店の向かいの道端にたたずんでいたのをじーっと見守っていると、小さな穴にもぐっていってしまった。
本を読みながら、タマを待つこと30分。
しかし、そろりそろりとストーカーのように後をつけているのが気に入らなかったのか、突然ダッシュして走り去ってしまった。
(続く)
タマのいるお店「藤井理容室」
住所 東京都千代田区神田須田町2-12
勤務時間 気まぐれ
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梅津有希子 (うめつ ゆきこ)
編集者・ライター。1976年北海道生まれ。ヤマハ勤務の後、FMラジオ局、編集プロダクションなどを経て、2005年に独立。女性誌や単行本、webを中心に、ペット、料理、美容など幅広いジャンルで活動中。「CREA cat」「CREA Dog」を毎号担当するほか、別冊マーガレットの『青空エール』(集英社/河原和音)の監修も務める。著書に『吾輩は看板猫である』『吾輩は看板猫である 東京下町篇』(文藝春秋)、『We are ブサかわねこ』(角川書店)、『終電ごはん』(幻冬舎)がある。
公式サイト:umetsuyukiko.com Twitter:@y_umetsu
Column
梅津有希子の商店街ネコ探訪
大人気のネコフォトブック『吾輩は看板猫である』、そしてその第2弾の『吾輩は看板猫である 東京下町篇』の著者、梅津有希子さんが、看板猫を探して、今度は商店街を巡ります。
2013.05.10(金)