そうなったときには食料自給率が3割台の日本は、致命的な影響を受けるでしょう。コロナ禍でマスク不足が問題になりましたが、家から出なければ済むマスクとは違い、食料枯渇は命に直結します。気候変動はコロナよりはるかに大きい影響を人類全体に引き起こすんです。
自分たちの子どもや孫の世代に「なぜあの時、止めてくれなかったんだ」と嘆かれることにならないよう、私たちには資本主義に緊急ブレーキをかける倫理的責任がある。そのことを本書で伝えたかった。
ヤマザキ 環境に優しいとされるリチウムイオン電池が、じつは生態系を破壊しているという話には驚きました。
原料であるリチウムの最大産出国であるチリでは、塩湖からリチウムを採取するために尋常じゃない量の地下水が日々汲み上げられ、最終的にはアンデス・フラミンゴの個体数が減ってしまった。シリアの内戦は、気候変動がもたらした不作によって、人々が困窮したことが原因であることも本書で初めて知った現実です。今後、世界中の砂漠化が進めば、世界のあちこちで紛争が起こるようになると思います。
実際にヨーロッパ南部の砂漠化が加速しているだけではなく、アフリカの諸地域では既に農作物では食べていけなくなった沢山の難民が地中海から続々ヨーロッパへ入ってきています。ヨルダンでは都市部に水を供給する水源が枯渇しつつある土地も少なくなく、水を巡る戦争や紛争も起こりかねないと現地の人々は危惧しています。
世界ではこれだけの問題が顕在化しているというのに日本ではニュース番組で取り上げられることもない。自分の国にしか関心が無く、世界で発生している問題を「対岸の火事」と考える人が多いのが心配です。
コロナをきっかけに、日本をもっと声をあげやすい社会に
斎藤 ヤマザキさんの新刊『たちどまって考える』でイタリアにおけるコロナ禍の日常を拝読して、日本人の批判精神の足りなさについて考えさせられました。私はドイツに6年間留学していたので、感覚的によくわかります。日本では「金儲けがうまい人が偉い」という空気が蔓延し、国やメディアもその風潮を煽ってきました。
2021.04.25(日)
文=大越裕