イタリアと日本を行き来し『テルマエ・ロマエ』を描いた漫画家ヤマザキマリさんと、フランス滞在経験もある脳科学者の中野信子さんが、新型コロナを通して見える文明について語り合った。

 おふたりの著書『パンデミックの文明論』から熱い会話を抜粋。


小池百合子のカタカナ語

中野 東京での感染対策では、またもや小池百合子都知事の存在感が際立ちましたよね。マリさんは小池都知事についてはどんな印象をお持ちですか。

ヤマザキ 東京五輪が延期となったあたりから吹っ切れて、国がやらないのなら私がやる、という姿勢に切り替わったのがわかりました。それと同時に、いろいろ気を配っているというのも。

 お知り合いのどなたかが作っているという噂の日替わりの手作りマスクを見ていても、そんなことを感じました。

 ただ、あの意気込みの根拠はわからない。女性は男性のような狩猟本能の意気込みとは違うものを持っていると思うんです。古代ローマの権力者たちの背後にいた女性たちがそうだったように。

中野 私は、すぐれて乱世の人だなと思うんです。こういう混乱とか危機が迫ってきた時にプレゼンスを発揮する人。

 そうそう、カタカナ語を多用する小池さんをいじったネタがSNSなどで出回ってるんですよ。

ちょっとご紹介しますね。
〈小池百合子ファーストアルバム
「ステイ・ホーム」
「東京アラート 夜の街」
「2年目のソーシャル・ディスタンス」
「恋のオーバーシュート」
「東京ロックダウン」
「今夜もウィズ・コロナ」……〉

ヤマザキ ハハハ、アルバムを発売した体(てい)で、彼女のこれまでのカタカナ発言をもじってるわけね。ムード歌謡のタイトルみたい。

中野 けっこうハマってるでしょ。大衆に刺さる言葉をうまく操る人ですよ。バズらせる要素を使うのが感覚的にうまいんです。古代に生まれていたら巫女みたいな人だったのかも。

2020.09.10(木)
文=ヤマザキマリ・中野信子