先のグレーバーは、「資本主義の先端を走るゴールドマン・サックスの社内だって、『はさみをとって』と頼まれれば、対価を求めずに渡すだろう。それこそがコミュニズムだ」と述べています。家庭内でも親は子供に対して「お前の教育には2000万円かかったから、大人になったら返せ」とは言いません。そんなふうに権力や貨幣を使わずに、相手を尊重しながら、適正に富を管理・分配するのがコミュニズムなんです。

※後半では「文科省の人文系学問軽視」「知的怠惰が生み出すSNSの言葉の暴力」といった日本社会を覆う問題点とともに、「1970年代のエネルギー使用量に戻そう」などの脱・資本主義の提案が語られていきます。続きは発売中の「週刊文春WOMAN vol.9(2021年 春号)」にて掲載。

text:Yutaka Ookoshi

ヤマザキマリ Mari Yamazaki
1967年東京都生まれ。漫画家・文筆家。東京造形大学客員教授。84年渡伊。フィレンツェの国立アカデミア美術学院で美術史・油絵を専攻。2010年『テルマエ・ロマエ』でマンガ大賞、手塚治虫文化賞短編賞を受賞。著書に『ヴィオラ母さん』(文藝春秋)など。

斎藤幸平 Kohei Saito
1987年東京都生まれ。経済思想家。大阪市立大学大学院経済学研究科准教授。米ウェズリアン大学卒業。ベルリン・フンボルト大学哲学科博士課程修了。2018年、マルクス研究の最高峰「ドイッチャー記念賞」を日本人初・歴代最年少で受賞。編著に『未来への大分岐』など。

週刊文春WOMAN vol.9 (2021年 春号)

谷川俊太郎、ヤマザキマリ×斎藤幸平ほかと考えるコロナ禍一年/内田也哉子×中野信子×又吉直樹の家族論

2021年3月22日 発売
文藝春秋
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2021.04.25(日)
文=大越裕