角川春樹監督に“なにか違う”と言われ……

 役への深い理解は、「生涯最後の映画監督作」として本作を手掛けた角川春樹監督のビジョンともばっちり合っていたそう。

 事前のホン読みにて、角川監督は「うん、いい」と小関さんに太鼓判を押していた。……しかし、いざ撮影本番を迎えると、事態は一変。

 「監督からは“違う、違う!”の嵐でした。言葉や作品、シーンの解釈は間違っていないけど“なにか違う”と言われて……。現場が止まりながらも、監督と話し合って、やって、という繰り返しの撮影でした」と、意外な苦労を明かした。

 だからこそ、「思い通りにできていない部分もあったので、初号では怖くて引きながら観始めたんです。でも、自分で言うのも何ですけど、すごく良かったんです。自分自身に対して衝撃が走りました」と、目を見開いた。

 「スクリーンに、観たことのない自分がいました。監督が“違う”とおっしゃっていたことがわからなかったのは、僕の中に引き出しがなかったからだ、と観て初めて気づきました。

 理解はしていたとしても現代劇ではないから、表現しようとしても、どうしてもできていなかったところがあったというか。監督からは新しい引き出しをいただきましたし、新しい価値観、新しい自分を教えてもらいました。大きく成長した作品だと思っています」
 

2020.10.15(木)
文=赤山恭子
撮影=佐藤 亘
スタイリスト=吉本知嗣
ヘアメイク=MIZUHO(Vitamins)