「世之介は高良くん以外に考えられませんでした」
1977年、埼玉県出身。日本大学芸術学部映画学科卒業。TVドラマの脚本・演出を経て、監督・脚本を手掛けた『南極料理人』(09)で商業映画デビューを果たす。『キツツキと雨』(12)で各賞を受賞するほか、第4回TAMA映画賞では最優秀新進監督賞を受賞
『横道世之介』は、吉田修一の小説が原作。小説を元に映画を作るのは初めての沖田監督、「登場人物がすごく魅力的だったので、それを俳優さんが演じたらどう映るんだろう、映画になったらおもしろそうだなと思った」とのこと。
主演の高良健吾と組むのは4度目ですが、「彼は他ではダークでハードボイルドな役が多いんですが、僕のなかでは等身大の若者っていうイメージがあった。世之介は高良くん以外に考えられませんでした」ときっぱり。世之介の同級生、倉持役の池松壮亮について「めちゃくちゃうまい。現役の大学生なので、身の回りの感じをよくわかっていてやりやすかった」など、キャストにまつわる秘話に観客は興味津々です。ヒロインの祥子役に吉高由里子を選んだ理由が「単純にファンだったから(笑)」なんて率直な発言には一同爆笑! 「加藤役の綾野剛さんと高良くんとの掛け合いがすごく微笑ましいんですよ」といったコメントの数々に、映画への期待が高まっていきます。
作品の舞台となるのはバブル真っ只中の1987年。当時小学校5年生だった監督は「80's 画像」とネット検索するなど、猛勉強したと明かしてくれました。衣装では特に、どんどん東京に染まっていく柄本佑に要注目! また、撮影はオールロケで行われたため、ロケハンにまつわる苦労話も。看板をひとつひとつ作り込んだという、世之介と祥子が初めて出会う下北沢をイメージした駅前のシーンなど、端々に映る時代感も見どころのひとつです。
会場からの質問も飛び出し、もっともっとお話を聞いていたいところでしたが、残念ながらタイムオーバー。プレゼント抽選会で盛り上がった後、監督から「長い時間をかけて丁寧に作りました。見終わった後もふと世之介のことを考えてしまうような、僕自身も気にいっている映画です」と締めの挨拶があり、休憩をはさんでいよいよ映画の上映へ。
トークで監督が注目ポイントとして挙げたシーンはもちろん、随所で温かな笑いがこぼれる、あっと言う間の2時間40分。エンドロールが消えると、会場からは自然に拍手がわき起こりました。軽く目を潤ませる人もいれば、終わったばかりの映画についてお友達と熱く語り合う姿も。全員にプレゼントされたノベルティグッズを手に会場を後にする皆さんの優しい表情が、映画の素晴らしさを物語っているようでした。
『横道世之介』
1987年、大学進学のため長崎から上京した横道世之介18歳。愛すべき押しの弱さと隠された芯の強さで、様々な出会いと笑いを引き寄せる。友達の結婚に出産、学園祭でのサンバ、お嬢様との恋愛、カメラとの出会い。そんな青春時代を送った16年後、彼にかかわった人達に愛しい日々と優しい記憶が鮮やかによみがえり……。
yonosuke-movie.com
2013年2月23日(土)より 新宿ピカデリー他全国ロードショー
原作:吉田修一・著『横道世之介』(文春文庫)
URL www.bunshun.co.jp/cgi-bin/book_db/book_detail.cgi?isbn=9784167665050
2013.02.22(金)
text:Mami Hagiwara
photographs:Toshiya Kondo